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2016年5月2日号 
 

5月前半の新刊

感覚する服 Sensing Garment

■松居エリ=著
■B4判変型/並製 180頁 オールカラー
■定価=本体5,800円+税
■2016年5月16日刊行

ウエディングドレス業界で著名でありながら、数学や科学をとり入れた最先端ファッションのデザイナーとしても名高い松居エリ。科学、アート、哲学の視点から「服とは何か」を探求し創造しつづけた軌跡をたどる作品集。

●●●担当編集者より●●●

本書の制作期間はなんと6年! アートディレクションはもとより、エディトリアルデザイン、編集など、すべて松居エリさんとスタッフの齋藤敏明さんが手がけ、文字通りのアーティストブックとなっています。読みどころは、トポロジー、対数螺旋、フラクタル等、科学・数学の理論を応用した独自のファッション作品の全貌をカラー写真で集大成している点、そして松居さんの渾身の書き下ろしテキストで、ファッションを超えた「服」のもうひとつの姿を浮き彫りにしている点です。 あえて類書を挙げるならば、衣装哲学SFの傑作、バリントン・J・ベイリーの『カエアンの聖衣』(ハヤカワ文庫)と、マイルス・デイヴィスのファッションと音楽の関係に切り込んだ菊地成孔・大谷能生の『M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究』(河出文庫)でしょうか。人間の身体にとって、「服とは何か」を徹底的に探求している姿勢が共通しています。
(石原)


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5月末 刊行予定

にんげんいっぱい うたいっぱい

------日本の音はどこへ行く

■桃山晴衣=著
■杉浦康平=造本
■四六判/フランス装 388頁
■定価=本体4,500円+税
■2016年5月末刊行予定

「梁塵秘抄」を現代に甦らせ、日本の音を求め創造した稀有な音楽家・桃山晴衣の遺稿集。永六輔、五木寛之が瞠目し、ピーター・ブルック、デレク・ベイリー、ピナ・バウシュと交流を重ねた音楽遍歴の記録を、「随想」と「対話篇」で一冊に凝縮。
気品漂うフランス装、流麗なレイアウト、パール箔をあしらった本表紙……など、校正に校正を重ね、最高の仕上がりを目指した杉浦康平のこだわり抜いた造本も魅力。


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イベント告知

『感覚する服』刊行記念トークイベント

------ABC本店にて開催。特別ゲストも決定!

まもなく刊行予定の『感覚する服 Sensing Garment』
5月17日(火)青山ブックセンター本店にて、著者の松居エリさんのトークショーを開催いたします。入れ替え制の2部構成で、特別ゲストもおふたり。I部にカオス工学研究の東大教授・合原一幸さん、II部にアタッシェ・ドゥ・プレスの内藤純子さんが登場します。
松居さん自ら制作したオリジナル・ムービーの上映や、モデル1名に実際のオートクチュール作品を着て歩いてもらうなど、充実の内容。科学とファッションが交差するエキサイティングな夕べをお楽しみください。
料金は各部810円(税込)で、定員100名様。お申込みは青山ブックセンターへ。詳しくはこちら

 

 

イベント報告・クラウドファンディング告知

『にんげんいっぱい うたいっぱい』刊行前夜祭

------工作舎、初クラウドファンディングも

今月末の刊行に向けて鋭意制作中の『にんげんいっぱい うたいっぱい』。4月19日~30日、都内のカフェ&ギャラリー「馬喰町ART+EAT」にて出版記念展を開催。22・23日には、著者・桃山晴衣さんのパートナーでもある、ピーター・ブルック劇団音楽監督で演奏家の土取利行さんによりトーク&ライブが行われ、会場を賑わせました。また、16日には京都・恵文社COTTAGEでもトーク&ライブが行われました。詳しくはこちら
この本では、クラウドファンディングという工作舎初めての試みも。故桃山さんの音楽論を広く知っていただくため、巨匠・杉浦康平さんの妥協を許さないブック・デザインを世に送り出すため、邦楽という形に残りにくい伝統文化を後世に伝えるため……。すでに大きな反響とご支援をいただいておりますが、引き続きさらなるご支援をお待ちしております。
ファンディングサイトには、本書を担当した工作舎編集長がメッセージを寄せており、工作舎の仕事場もチラリと写真で見られます。ぜひ一度ご覧ください。詳しくはこちら

 

kousakusha TOPICS

◆2月に刊行された『ハンセン病 日本と世界』。東京新聞(4月3日付)で書評が掲載されました。評者は東北学院大准教授・黒坂愛衣さん。「差別や隔離といった厳しい現実とともに、そこを生き抜いた回復者の生の断片や、かれらに寄り添った人々の声が紹介されている」と。ご自身もハンセン病をテーマとした著書を上梓されています。詳しくはこちら
また、本書執筆者のおひとりで、写真家の岡原功祐さんが、雑誌「PEN」のブログページで紹介してくださいました。「ドラゴンボールに出てきそうな山を越えて、さらに川も越えて、といったような旅でした。食べるものを持って行かないといけないので、カメラと一緒に中華鍋も背負って旅をしていたのを思い出します」との秘話も。詳しくはこちら
岡原さんの写真展が、現在、大正大学キャンパス内のギャラリー「Espace KUU」にて開かれています。原発事故後の福島を撮影した作品展「Fukushima Fragments」は、6月25日(土)まで開催予定です。詳しくはこちら

◆NSRI選書第3弾の『エネルギーマネジメントが拓く未来』の書評が、業界専門誌「月刊建築技術」に掲載されました。「エネルギーマネジメントという具体例を通して、再生エネルギー問題と持続可能な社会について考えるきかっけになる本である」と。詳しくはこちら

◆好評連載中の「ライプニッツ通信II」の第10回と第11回が更新されました。第10回ではベルギー、ブリュッセルのテロ事件から日本ライプニッツ協会大会まで。第11回ではライプニッツの庇護者であったゾフィーと彼女をとりまく傑物たちを紹介しています。詳しくはこちら

 

編集後記

『にんげんいっぱい うたいっぱい』の著者・桃山晴衣さんが晩年暮らした自然豊かな奥美濃・郡上八幡。本書にも出てくる「郡上おどり」という盆踊りは400年の歴史を持ち、開催期間の32夜のうち4日間は徹夜踊りが行われます。私も3、4回参加したことがありますが、ご多分に漏れず忽ちトランス状態に。お囃子や下駄の音、熱帯夜の気温と躍り手たちの熱気、無数の提灯の赤い光。それぞれが溶け合っていくような感覚でした。
本書のなかで、日本の伝統音楽の来し方行く末を丹念に探る桃山さんですが、言葉の端々にご自身の丁寧な暮らしぶりが読み取れます。自分の手でつくったその土地の作物を味わい、先人の知恵が息づく衣服を素肌にまとって、国内外の本物の音を聴く。つねに五感を大切に、暮らしのなかで豊かな刺激を自らの体に取り込んでいた桃山さん。活動の拠点を郡上八幡に据えた理由も頷けます。(葛生)

「もともとは五感ではなく一感であった。一感とは、一体の人間丸ごとの存在なんです。本来はこの一感として感じとらなければならない外界の存在というものを、私たちの日常の感覚受容はその中の一つ、二つだけで、何か寂しく行っているんじゃないかと思えてくる。」
―――――杉浦康平『アジアの音・光・夢幻』「香気豊かに五感を結ぶ――中村祥二さんとの対話」より