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2016年6月28日号 
 

6月の新刊

にんげんいっぱい うたいっぱい

------日本の音はどこへ行く

■桃山晴衣=著
■杉浦康平=造本
■四六判/フランス装 388頁
■定価=本体4,500円+税
■2016年6月27日発売

「梁塵秘抄」を現代に甦らせ、日本の音を求め創造した稀有な音楽家・桃山晴衣の遺稿集。永六輔、五木寛之が瞠目し、ピーター・ブルック、デレク・ベイリー、ピナ・バウシュと交流を重ねた音楽遍歴の記録を、「随想」と「対話篇」で一冊に凝縮。
気品漂うフランス装、流麗なレイアウト、パール箔をあしらった本表紙……など、校正に校正を重ね、最高の仕上がりを目指した杉浦康平のこだわり抜いた造本も魅力。

●●●担当編集者より●●●

  桃山さんのパートナーの土取利行さんから桃山晴衣遺稿集の出版の打診があったのは、もう5年以上も前のこと。生前の桃山さんとは、何度かお話しする機会もあり、渋谷のジァン・ジァンでのわらべ唄コンサートや下北沢でのバンドMOMOとしてのステージなども体験させていただいていた。
  桃山さんの音楽には、ほかの日本のミュージシャンにはない「格別な力」を感じた。今回の本『にんげんいっぱい うたいっぱい』では、なかなか一筋縄では表現しにくい桃山晴衣の力の背景にあるものが鮮明になったと思う。それは本来の日本の「うた」が持っていた力でもある。できることなら、この本を読んでから、もういちど桃山さんのステージを体験したかったと切に思う。
  本づくりは、桃山さんが大ファンだった杉浦康平さんに託すことができた。また工作舎初のクラウドファンディングを試み、予想以上の多くの方々からの支援を受けた。いまのところ桃山晴衣の名を知る人は、それほど多くはないかもしれないが、今後もおそらく土取利行さんが主宰する立光学舎レーベルからは、多くの未発表音源が発売されるはずだ。本書とともに、新しい桃山ファンが増えることを期待したい。
(米澤)

 

7月 刊行予定

霊獣が運ぶ アジアの山車

------この世とあの世を結ぶもの

■齊木崇人=監修
■杉浦康平=企画・構成
■A5判 308頁 オールカラー
■定価=本体3,200円+税
■2016年7月中旬刊行

靈獣を冠した舟は、水上を滑り、地を曳き、空を舞う……。巨大な鳥を飾るミャンマーの舟山車や信濃のオフネ、バリ島やタイの葬儀山車など、絢爛豪華な山車をテーマに、多様な意匠にやどる物語をひも解く。図版満載、オールカラー。

クラウドファンディング報告&ブックフェア告知

『にんげんいっぱい うたいっぱい』御礼とお報せ

------クラウドファンディング終了! そしてブックフェアへ

妥協のない本作りによって、伝統工芸品のような佇まいで世に送り出された『にんげんいっぱい うたいっぱい』。工作舎初の試みとして、クラウドファンディングで読者の皆さまからご支援を募っておりました。締切日の6月15日までに多くの賛同者の方が応募してくださり、目標金額を超えるご支援をいただきました。本書への期待値の高さを改めて認識したしだいです。本当にどうもありがとうございました。詳しくはこちら
7月1日(金)からは青山ブックセンター六本木店にて、本書の刊行記念フェアが開催予定。「日本の音 ブックフェア」と題して、本書の編集担当でもあり工作舎編集長の米澤敬が選んだ「日本の音」関連図書60点余が展開されます。桃山晴衣『梁塵秘抄 うたの旅』、土取利行『縄文の音』(共に青土社)をはじめ、山口昌男『エノケンと菊谷栄』(晶文社)、合田道人『日本人が知らない外国生まれの童謡の謎』(祥伝社)などが並びます。

 

 

ブックフェア告知

「ハンセン病をめぐるブックフェア」開催

------読み応えのあるブックガイドやノベルティも

6月19日(日)より紀伊國屋書店新宿南店にて「ハンセン病をめぐるブックフェア」がスタート。これは『ハンセン病 日本と世界』の執筆者のおひとり、佐藤健太さんによる企画で、関連書籍100点以上がずらりと並んでいます。
「ハンセン病を学ぶためのブックガイド」も新たに作成され、フェア台にて配布中。佐藤さんのほかに、本書の執筆者3名も、奥深い世界へと手引きする濃密な紹介文を寄せています。工作舎はブックガイドの編集・制作で参加させていただきました。
このフェアで『ハンセン病 日本と世界』をお買い上げの方には、佐藤さん特製のノベルティセットをプレゼント。数に限りがあるので、お早めにお求めください。詳しくはこちら

 

kousakusha TOPICS

◆6月27日(月)・28日(火)に開催される、日本学術会議の公開シンポジウム「フロンティアを目指す、サイエンスとアート」。第1日目のセッション「美とアート」にて、5月刊行の『感覚する服 Sensing Garment』の著者・松居エリさんと、『イマジナリー・ナンバーズ』の著者・木本圭子さんが登壇されます。もう一人のスピーカーは、「シンデレラ・テクノロジー」研究者の久保友香さんです。詳しくはこちら
また、ファッション業界のニュースサイト「FASHION HEADLINE」に松居さんのインタビュー記事が掲載されました。卓越したファッション哲学が垣間見られる内容です。詳しくはこちら

◆工作舎が20年以上前に邦訳を刊行し、ロングセラーとなった『無限の天才-夭逝の数学者ラマヌジャン』。本書を原作とした映画「ザ・マン・フー・ニュー・インフィニティ(The Man Who Knew Infinity/邦題未定)」がイギリス、アメリカで公開されて話題を呼んでいます。インドで薄給の事務員として働いていた青年ラマヌジャンが、数学の非凡な才能を見出され、英国数学界で頭角を現していく物語。日本では2016年秋に公開予定です。詳しくはこちら

◆3月に刊行された『「できる」を育む家づくり』のパブリシティが続いています。4月27日付岐阜新聞に著者インタビューが掲載され、5月には住宅・工務店業界のニュースサイト「新建ハウジング」にて本書を紹介していただきました。詳しくはこちら
また6月18日には中日新聞の夕刊、カラーページにて著者コメントも含めた紹介が掲載されました。

◆ウェブ連載「ライプニッツ通信 II」第12回が更新されました。没後300年を記念する学術的なイベントがいくつも企画されている本年。ベルリンで4月に開催された「ユートピアと多様性:ライプニッツの言語プロジェクト」には日本ライプニッツ協会会長の酒井潔先生がパネラーとして参加されました。詳しくはこちら

◆ストレス学説を打ちたてたハンス・セリエの名著『生命とストレス』。長らく品切状態でしたが、カバーを増刷して、通常通り出荷できるようになりました。詳しくはこちら

 

編集後記

最新刊『にんげんいっぱい うたいっぱい』の著者・桃山晴衣さんは、その多様な活躍のなかでも、中世歌謡「梁塵秘抄」を復元・作曲したことが知られています。「梁塵秘抄」は後白河法皇が今様歌謡の歌詞を編んだものですが、それらの多くは、流れ者である遊女(あそび)たちが作り出し、口伝えで巡っていくなかで成立したと考えられているようです。たくさんの手や口を介して洗練を極めていった庶民たちによる古典作品ですが、編纂された「梁塵秘抄」もその大部分は失われた状態で、今日読めるのはほんの一部にすぎないのだそうです。しかし書物のかたちで残されなければ、その存在すら歴史のなかに完全に埋もれてしまっていたのかもしれません。
巨大な音楽産業の陰に隠れがちな邦楽という伝統芸能。文化批評も含む桃山さんの随筆によって、その良さが少しでも永く伝えられていけばよいなと思いました。 (葛生)

「文化は大地から生まれている。……農業や林業と同じで、文化は一朝一夕には成りませんし、いったん失われると回復は困難ですし、回復できるとしてもたいへんな時間を要することになるでしょう。」(十二代目市川團十郎)
―――――小泉英明+市川團十郎『童の心で』第9章「日本の再創造に向けて」より