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2016年7月22日号 
 

7月の新刊

霊獣が運ぶ アジアの山車

------この世とあの世を結ぶもの

■齊木崇人=監修
■杉浦康平=企画・構成
■A5判 308頁 オールカラー
■定価=本体3,200円+税
■2016年7月21日発売

靈獣を冠した舟は、水上を滑り、地を曳き、空を舞う……。巨大な鳥を飾るミャンマーの舟山車や信濃のオフネ、バリ島やタイの葬儀山車など、絢爛豪華な山車をテーマに、多様な意匠にやどる物語をひも解く。図版満載、オールカラー。

●●●担当編集者より●●●

靈獣の力をかりて、迎え・送る

出来上がった本を手に「アイスクリームのような表紙だね」と、杉浦先生の声がひときわ清々しい。
ページを開けば、山並み、海波、ミャンマーの黄金の舟と膨らむ人波。タイの祭りはナーガに継ぐナーガにガルーダが絡みつく。わが里山を練り歩く舟山車のそれぞれの意匠に揺られ、中国伝来の龍頭鷁首(りゅうとうげきす)の雅な王朝絵巻の渦中へ。第2部はバリ島とタイ。いずれも葬儀山車というのに、いっこうに静まる気配はない。クライマックスは動物神とともに炎に包まれる棺、その火力で宙を舞う赤い僧衣サンカーティにめまいし、遠方からのどよめきが聴こえて来るような……。だから、いったん表紙に戻って、熱気を冷ましてからじっくり読んでいただくのがよいかもしれない。
「伝統を再発見し、発展させる力を育もう」と願う杉浦康平率いるKDUアジアンデザイン研究所のシンポジウム開催から足掛け3年、私たちが参加させていただいたブラッシュアップの半年間は、先行するスタッフに追いつくのに無我夢中。春の予定が真夏の出版となりました。
(田辺)

 

8月 刊行予定

となりの生物多様性

------医・食・住からベンチャーまで

■宮下 直=著
■四六判 176頁+カラー口絵8頁
■定価=本体1,900円+税
■2016年8月中旬刊行予定

微生物の研究から生まれる医薬、ヤモリの足やハスの葉などの機能を学び活かす技術バイオミメティクス、日本の季節感や伝統色に表れる多彩な生き物たち…。生物多様性からの恩恵は計り知れない。生物多様性の視点から私たちの生活や社会を見つめ直し、よりよい将来を育むための科学エッセイ。

ブックフェア告知

ABC六本木店「日本の音」ブックフェア

------『にんげんいっぱい うたいっぱい』刊行記念!

7月1日より青山ブックセンター六本木店にて、「桃山晴衣『にんげんいっぱい うたいっぱい』刊行記念 日本の音ブックフェア」が開催中です。日本人の心性に深く根差した、演歌、三味線、説経節、唱歌……。日本の音にまつわる関連書籍約60点を、工作舎編集長・米澤敬がセレクトし、コメントも寄せています。品切本も含めてまとめた小冊子も作成し、無料配布しています。
フェアコーナーには、『にんげんいっぱい うたいっぱい』制作時に出た複数の色校もディスプレイされており、グラフィックデザイナー・杉浦康平さんのお仕事の軌跡をほんの少しのぞくことができます。詳しくはこちら

 

kousakusha TOPICS

◆「茶室」や「見立て」といった伝統的な日本の空間デザインをひも解き、暮らしの将来を描き出す、内田繁さんの著書『茶室とインテリア』。2005年刊行以来ロングセラーとなっている本書ですが、一時的に品切状態となり増刷が決定! ただいま重版中で、8月上旬に4刷が出来上がる予定です。

『僕はずっと裸だった』の著者・田中泯さん。主演映画「ほかいびと~伊那の井月~」が7月23日(土)に山寺芭蕉記念館、24日(日)にフォーラム山形で上映され、当日会場でも本を販売していただきます。 上映に先行して、6月15日からは八文字屋北店と天童店では特設コーナーを設けています。本書も面陳されています。詳しくはこちら

◆7月1日~9月4日で京都市美術館にて開催中の「ダリ展」。ダリは科学に親しみ、その影響は作品にも見られるそうです。ミュージアムショップでは科学の本も販売中。シュレーディンガー『精神と物質』も扱っていただいています。9月14日からは国立新美術館で開催予定です。詳しくはこちら

◆ウェブ連載「ライプニッツ通信 II」の第13回が更新されました。ノーベル物理学賞受賞者スティーヴン・ワインバーグの著作にも触れつつ、人文科学と自然科学の双方に多くの功績をのこしたライプニッツについて綴っています。詳しくはこちら

◆工作舎の新しい図書目録「年刊土星紀2016-17」が出来ました! ご希望の方には無料でお送りいたします。詳しくはこちら

 

編集後記

『霊獣が運ぶ アジアの山車』が刊行となりました。全頁オールカラーなので、ミャンマーやタイの迫力ある山車のビジュアルにも圧倒されます。本書の主題として考察されているアジア各国の山車は、死者の魂や神霊を乗せると考えられており、祭礼の中心的な祭具です。独自のアニミズムを意匠化し、神話に登場する龍や鳥、蛇など、多種多様な聖なる鳥獣たちを乗せています。
これから各地でお祭りが続々ととり行われる季節。舟山車と日本の神輿とを見比べてみるのも面白いかもしれません。(葛生)

「アジアの神話空間では、複数の、あるいは数えきれないほどの「小さな主語」、あるいは主語とは呼べないほどに「幽かなる存在」が、宇宙の森羅万象を満たしきっているのです。」
―――――杉浦康平『多主語的なアジア』4章「アジアの森羅万象をみたす多主語的なもの」より