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2016年8月8日号 
 

8月の新刊

となりの生物多様性

---医・食・住からベンチャーまで

■宮下 直=著
■四六判 176頁+カラー口絵8頁
■定価=本体1,900円+税
■2016年8月8日発売

微生物の力でできた医薬品、生物の機能を学び活かすバイオミメティクスなど、くらしの中には生物多様性の恩恵があふれている。生物多様性の視点から私たちの生活や社会を見つめ直し、将来を考える科学エッセイ。


●●●担当編集者より●●●

クモの縁

東京大学の弥生キャンパスに初めて宮下直氏を訪ねたのは、メーテルリンク『ガラス蜘蛛』(2008年7月)の出版に際して、クモの生態に詳しい宮下氏のアドバイスと、クモ側からの解説文をお願いするためだった。そしてこの小さな物語にはもうひとり、仏文学者の杉本秀太郎氏(2015年逝去)からもご寄稿いただいた。同じ頃、杉本氏はナチュラリストらしく『ひっつき虫』(青草書房2008年5月)と題して、一冊のエッセイ集を出版されていた。
その「ひっつき虫」が、『となりの生物多様性』にも登場する。第4章「生物に学ぶテクノロジー」の焦点となるバイオミメティクス(生物模倣)の元祖とされるゴボウの実は、まさに「ひっつき虫」なのだ。
面識のないはずのお二人、これぞクモが結ぶ縁かな……と。ちなみに本書では、クモの糸が、がぜんその輝きを増します。 表紙を彩る生物アイコンのラインの微妙にも、著者の知が反映されています。
(田辺)

 

9月中旬 刊行予定

無限の天才 新装版

---夭逝の数学者・ラマヌジャン

■ロバート・カニーゲル=著
■田中靖夫=著
■A5判 384頁
■定価=本体5,500円+税
■2016年9月中旬刊行予定

20世紀初頭のインドに、独学で高等数学を修め、数多くの公式を発見した天才・ラマヌジャン。薄給の事務員として働いていた彼を認めたのが、英国数学界の頂点に立つハーディだった。本書を原作とした伝記映画『奇蹟がくれた数式』の日本公開を記念し、新装版で再登場!

 

9月下旬 刊行予定

ライプニッツ著作集 第II期
   第2巻 法学・神学・歴史学

---共通善を求めて

■G・W・ライプニッツ=著
■酒井 潔+佐々木能章=監修
■酒井 潔+長綱啓典+町田 一+川添美央子+津崎良典+佐々木能章+清水洋貴+福島清紀+枝村祥平+今野諒子=訳
■A5判 448頁
■予価=本体8,000円+税
■2016年9月下旬刊行予定

政治的、宗教的混迷の度を深めた17、8世紀ヨーロッパにおいて、宮廷顧問官として活躍しながら、広範かつ深遠な思想を究めた哲人・ライプニッツ。正義や宗教的平和についての省察、歴史学の方法論など、「事実の真理(偶然的真理)」をめぐる多彩な探究プロセスが、300年の時空を超えて本邦初公開。

 

 

映画情報

ロバート・カニーゲル『無限の天才』原作映画

---『奇蹟がくれた数式』の日本公開決定!

1994年刊行以来のロングセラー『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』。この書籍をもとにした映画が日本で公開されます!
タイトルは『奇蹟がくれた数式』、10月22日から角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿、また全国主要都市の劇場で続々公開予定です(配給:KADOKAWA)。映画を彩るのは主演ラマヌジャン役のデヴ・パテル(『スラムドッグ$ミリオネア』)やハーディ役のジェレミー・アイアンズなど豪華なキャスト陣たち。繊細な描写で繰り広げられる、数学をめぐる上質なヒューマン・ドラマです。公式サイトはこちら
『無限の天才』はちょうど品切となったため、装いを新たに9月中旬に刊行予定です。「読んでから見るか、見てから読むか」。どうぞお楽しみに。詳しくはこちら

 

 

kousakusha TOPICS

◆鮮烈な実写映像やCGで最新の宇宙研究に迫る、NHK BSプレミアムの1時間番組 「コズミックフロントNEXT」。次回、8月11日(祝・木)22:00~の放送は、「天文学史上最大のスキャンダル? 知の怪人・ケプラーの真実」。ケプラーが、世界最高の観測データを持っていた天文学者ティコ・ブラーエを殺害し、データを盗み出したという疑惑の真実に迫り、嫌疑を晴らします。ケプラー3部作『新天文学』『宇宙の神秘』『宇宙の調和』の翻訳者・岸本良彦さんが出演し、また『新天文学』の表紙もちらりと映るそうです。詳しくはこちら

◆たくさんの方がたのご協力のもと、6月に刊行された『にんげんいっぱい うたいっぱい』。7月23日付岐阜新聞にてカラーの表紙写真とともに、著者・桃山晴衣さんの記事が掲載されました。「うたの魅力を信じ続けた桃山さんの探求は、個人と組織、暮らしと表現の形など現代社会への問い掛けにもなっている」と。詳しくはこちら

◆8月の新刊『となりの生物多様性』。著者の宮下直さんが、長野県飯田市で開催された、下伊那教育会主催の夏季講座で講演を行いました。題目は「身近な生物多様性:医・食・住からベンチャーまで」。500人近くが出席する盛況ぶりだったそうです。

◆「NEW ENERGY」7月号に『エネルギーマネジメントが拓く未来』の書評が掲載されました。「『省エネ』という、一見、使い古された言葉が、新しい可能性を持って蘇ってくるだろう」と。詳しくはこちら

◆連載「ライプニッツ通信II」第14回が更新されました。没後300周年の今年最大のイベント「国際ライプニッツ会議」の歩みについて。西田幾多郎と、その弟子で『ライプニッツ著作集 第I期』の監修者である下村寅太郎先生とのかかわりについても触れています。詳しくはこちら

 

編集後記

8月の新刊『となりの生物多様性』は、『生物多様性のしくみを解く』(2014年4月刊)につづく、著者・宮下直さんの工作舎での2冊め。多種多様な生き物エピソードをまじえながら、豊かで持続可能な生き方を探っていきます。山や海などに足を運ぶことも増えるこの季節。本書を片手に、人びとに恵みをもたらしてくれる生物たちの息吹きを感じてみてはいかがでしょうか。(葛生)

「自然界の生物多様性は、想像を超えるような長い年月を経て、試行錯誤の末に形成された傑作のようなものである。」
―――宮下直『生物多様性のしくみを解く』5章「多様性の原理」より