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2016年9月26日号 
 

9月の新刊

無限の天才 新装版

---夭逝の数学者・ラマヌジャン

■ロバート・カニーゲル=著
■田中靖夫=訳
■A5判 384頁
■定価=本体5,500円+税
■2016年9月23日刊行

20世紀初頭のインドに、独学で高等数学を修め、数多くの公式を発見した天才・ラマヌジャン。薄給の事務員として働いていた彼を認めたのが、英国数学界の頂点に立つハーディだった。本書を原作とした伝記映画『奇蹟がくれた数式』の日本公開を記念し、新装版で再登場!

●●●担当編集者より●●●

ロバート・カニーゲル『無限の天才──夭逝の数学者ラマヌジャン』を原作とする映画がマシュー・ブラウン監督のもとに製作されると発表があったのは、今をさかのぼる十年前、2006 年のことでした。
その後、ごくまれに進捗状況を仄聞することはあっても、一向に公開情報とはならないので、かつてジャン・チュイリエ『眠りの魔術師メスマー』のデヴィット・ボウイ主演による映画化の話が流れた事態の二の舞になったのではと案じていました。 そんな不安を払拭して、ついに『奇蹟がくれた数式』として、10月22日から公開(配給KADOKAWA)! この機に新装版を上梓しました。
映画はラマヌジャン(デヴ・パテル)とハーディ(ジェレミー・アイアンズ)が、人種や文化的背景を超えてひたすら数学的真理を希求する姿が胸に迫ります。ジェレミー・アイアンズ演じるハーディが格好良すぎて、ラマヌジャンの神秘性がかすみがちになるほどです。
ラマヌジャンの神秘性を実感するには、原作を読んでいただくにしくはありません。決して薄い本ではありませんが、ラマヌジャンの育った南インドの環境や第一次世界大戦の戦火が迫るケンブリッジでのハーディとの研究生活をいきいきした記述で甦らせ、親戚の甥っ子を見守る心地で不世出の天才と喜怒哀楽を共にしながら、はかなくも無限に深遠な生涯に寄り添うことができます。
(十川治江)

 

10月上旬 刊行予定

ライプニッツ著作集 第II期
  第2巻 法学・神学・歴史学

---共通善を求めて

■G・W・ライプニッツ=著
■酒井 潔+佐々木能章=監修
■酒井 潔+長綱啓典+町田 一+川添美央子+津崎良典+佐々木能章+清水洋貴+福島清紀+枝村祥平+今野諒子=訳
■A5判 452頁
■定価=本体8,000円+税
■2016年10月上旬刊行予定

政治的、宗教的混迷の度を深めた17、8世紀ヨーロッパにおいて、宮廷顧問官として活躍しながら、広範かつ深遠な思想を究めた哲人・ライプニッツ。正義や宗教的平和についての省察、歴史学の方法論など、「事実の真理(偶然的真理)」をめぐる多彩な探究プロセスが、300年の時空を超えて本邦初公開。

 

 

『無限の天才 新装版』関連情報

映画『奇蹟がくれた数式』を記念して

---公開より一足先にフェア、そしてウェブ特集

ロバート・カニーゲル『無限の天才 新装版』を原作とした映画『奇蹟がくれた数式』の公開を1カ月後にひかえ 、徐々にラマヌジャン熱が高まってきています。八重洲ブックセンター本店や神保町の東京堂書店、渋谷のMARUZEN &ジュンク堂書店、大阪のMARUZEN &ジュンク堂書店梅田店、丸善京都本店の理工書売場では、すでにフェアを展開中。ラマヌジャンや数学にまつわる関連書籍が揃えられています。詳しくはこちら
また、丸善雄松堂株式会社が運営するウェブサイト「Knowledge Worker(ナレッジワーカー)」にて、映画公開を記念して「ラマヌジャンと天才数学者」と題した特集が組まれました。ラマヌジャンを中心に、歴史上の数学者たちをめぐる書籍が102冊も画面上にずらり。どれも知的好奇心をくすぐるラインナップです。詳しくはこちら

 

 

kousakusha TOPICS

◆8月の新刊『となりの生物多様性』が、日経サイエンス2016年10月号にて紹介されました。「微生物の力を新薬に結びつけたノーベル賞科学者大村智博士、ヒトが体内に持つ細菌の多様性、ヤモリの足の接着やハスの葉の撥水機能を利用したバイオミメティクスなど、興味をひかれる話題が並ぶ」と。詳しくはこちら

◆和菓子の老舗・とらやの店舗にて、「月よみ BOOK CAFE」を開催中(~10月16日)。荻窪の書店「Title」店主・辻山 良雄さんが選書した、月にまつわる本が紹介されています。そのなかには『人間人形時代』も。開催店舗は虎屋菓寮 京都一条店とTORAYA TOKYO。詳しくはこちら。

◆北海道立文学館で「2016年の宮沢賢治―科学と祈りのこころ」展が開催中(~11月16日)です。ロングセラーのビジュアルブック『賢治と鉱物』の著者のおひとり、青木正博さんの鉱物写真も使用されています。詳しくはこちら。また、二子玉川蔦屋家電では、「生誕120年 宮沢賢治」と題したフェアにて本書が一段高い平台にディスプレイされています。さらに、JTBカード会員誌「THE GOLD 9月号」にて紹介されました。詳しくはこちら

◆南青山の精神世界専門書店、ブッククラブ回のニューズレターvol.102にて、『地球生命圏』が紹介されました。「エコロジーなどの分野に大きな影響を与えた思想の原典ともいえる本書。ガイアの一員としての人間の役割を考えることは現在でも大きな課題といえるだろう」と。詳しくはこちら

◆ウェブ連載「ライプニッツ通信II」第15回が更新されました。今回は、ライプニッツ研究会員のおひとり、長綱啓典氏による国際ライプニッツ会議の報告です。日本ライプニッツ協会主催のセクションやその他の興味深い研究発表についても。詳しくはこちら

 

編集後記

9月の新刊『無限の天才 新装版』の刊行に先立ち、映画『奇蹟がくれた数式』の試写会にお邪魔してきました。数学を介し、人種や文化の違いを超えて絆を深めていくラマヌジャンとハーディですが、それぞれがどうしても譲れない、真理へのアプローチ法の違いという不協和音も丁寧に映像化されていました。安直な友情物語とは一線を画す、実話ならではのリアリティがありました。本書ではより詳しく、ふたりの繊細な関係性が描写されています。(葛生)

「ラマヌジャンはすでに初対面のときに、ハーディにはナマギーリ女神への信仰をわかってもらえまい、と了解してしまったのではあるまいか。“戦闘的な無神論者”とかつて称された人物、自分の保護者にして友人でもある人物を、そのような心の機微に関わることで挑発したくない、と直観したラマヌジャンは、豊かに広がる己れの精神世界を決して彼には打明けまいと誓ったに違いない。」
―――ロバート・カニーゲル『無限の天才 新装版』第7章「イギリスの冷気」より