■ロバート・カニーゲル=著
■田中靖夫=訳
■A5判 384頁
■定価=本体5,500円+税
■2016年9月23日刊行
20世紀初頭のインドに、独学で高等数学を修め、数多くの公式を発見した天才・ラマヌジャン。薄給の事務員として働いていた彼を認めたのが、英国数学界の頂点に立つハーディだった。本書を原作とした伝記映画『奇蹟がくれた数式』の日本公開を記念し、新装版で再登場!
●●●担当編集者より●●●
ロバート・カニーゲル『無限の天才──夭逝の数学者ラマヌジャン』を原作とする映画がマシュー・ブラウン監督のもとに製作されると発表があったのは、今をさかのぼる十年前、2006 年のことでした。
その後、ごくまれに進捗状況を仄聞することはあっても、一向に公開情報とはならないので、かつてジャン・チュイリエ『眠りの魔術師メスマー』のデヴィット・ボウイ主演による映画化の話が流れた事態の二の舞になったのではと案じていました。
そんな不安を払拭して、ついに『奇蹟がくれた数式』として、10月22日から公開(配給KADOKAWA)! この機に新装版を上梓しました。
映画はラマヌジャン(デヴ・パテル)とハーディ(ジェレミー・アイアンズ)が、人種や文化的背景を超えてひたすら数学的真理を希求する姿が胸に迫ります。ジェレミー・アイアンズ演じるハーディが格好良すぎて、ラマヌジャンの神秘性がかすみがちになるほどです。
ラマヌジャンの神秘性を実感するには、原作を読んでいただくにしくはありません。決して薄い本ではありませんが、ラマヌジャンの育った南インドの環境や第一次世界大戦の戦火が迫るケンブリッジでのハーディとの研究生活をいきいきした記述で甦らせ、親戚の甥っ子を見守る心地で不世出の天才と喜怒哀楽を共にしながら、はかなくも無限に深遠な生涯に寄り添うことができます。
(十川治江)