■G・W・ライプニッツ=著
■酒井 潔+佐々木能章=監修
■酒井 潔+長綱啓典+町田 一+川添美央子+津崎良典+佐々木能章+清水洋貴+福島清紀+枝村祥平+今野諒子=訳
■A5判/上製 452頁
■定価=本体8,000円+税
■2016年10月7日刊行
政治的、宗教的混迷の度を深めた17、8世紀ヨーロッパにおいて、宮廷顧問官として活躍しながら、広範かつ深遠な思想を究めた哲人・ライプニッツ。正義や宗教的平和についての省察、歴史学の方法論など、「事実の真理(偶然的真理)」をめぐる多彩な探究プロセスが、300年の時空を超えて全編初訳。
●●●担当編集者より●●●
『ライプニッツ著作集』第II期全3巻の第2弾、『法学・神学・歴史学』をようやく上梓することができました。
没後300年にあたる今年はドイツでも年初からさまざまな行事が開催されており、なかでも7月にハノーファーで開催された最大のイベント、第10回ライプニッツ国際会議では日本ライプニッツ協会主催のセクションも設けられ、ドイツラジオ文化の取材も受けたとのことです(詳細は「ライプニッツ通信」長綱啓典、今野諒子両氏による報告参照)。
大会テーマが、そのまま第2巻のテーマと重なるので、上梓した本を国際会議に集った世界のライプニッツ研究者に披露したいと願っていたのですが、本邦初訳の論考はいずれも一筋縄ではゆかず、なんとかライプニッツの命日の11月14日には間に合ったしだいとなりました。
第1巻『哲学書簡』同様、第2巻も各部ごとに年代順に並べているので、20代はじめ(1667年)から死の前年(1715年)まで、ライプニッツの思想の成熟過程と首尾一貫ぶりを併せて味わうことができます。
第1部「法学」には、正義論や恒久平和論、ユートピア論、教育論など、EUはじめ国際情勢の混迷に直面する私たちにとっても示唆にとむ論考を収載。
第2部「神学」は、ヨーロッパにおける国家論の要ともなる考察を編集。マインツ選帝侯の政治的使命をおびてパリにゆき、最先端の数学にふれて驚嘆したはずの時期に書かれた『哲学者の告白』では、カルチャーショックを受けながらも宗教的問いを問わずにいられなかったライプニッツの底しれぬ活力を思い知らされます。
第3部「歴史学」では、史実をみきわめようとした地道なライプニッツの姿が明かされます。
どの論考をとってもライプニッツの面目躍如。拾い読みするだけでも自ずとエネルギーが満ちてくる心地がします。
(十川治江)