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2017年5月19日号 
 

5月の新刊

文字と書の消息

---落書きから漢字までの文化誌

■古賀弘幸=著
■A5判変型/上製 308頁
■定価=本体3,200円+税
■2017年5月15日刊行

漢字を敬いながら、単純化を試みたり、複雑な新作文字を生みだす漢字文化圏の人々。路地裏の落書きにも潜む書き手の息づかい。重ね書きで往代の滲みと重層させる書の方法や、身体を書と同化するパフォーマンス書道も人気を集める。生命力溢れる文字の豊かさと広がりを縦横無尽に物語る文化誌。

●●●担当編集者より●●●

子どもの頃からの鉛筆書きが、私の右手の中指に“ペンだこ”を棲まわせた。キーボードに順応して久しい今も、その面影は消えない。
「ふたたび身体化のために」と題して、『文字と書の消息』刊行記念ブックフェアが、東京・六本木の青山ブックセンターで始まる。著者の古賀弘幸さんは、編集者でもある。文字や書に関する本づくりの世界では、知る人ぞ知る存在であり、杉浦康平さんなども厚い信頼を寄せる。そんな古賀さんによる10年を超える月刊誌への連載の全貌を把握するのは難しいが、暗黙裡の協力体制のもと、一度ばらばらにして組み立て直すことにした。場所に棲む文字、漢字を取り巻くドラマ・・・一話ずつが集いはじめ、連続し、章ごとに新たな読み物になってゆく。こうして束ねられた本文を、遠く丹波の工場で製造される加工紙がくるむ。色あいが経年変化するというので、すでにある程度変化を重ねてきた製品を取り寄せた。
初めての単著ながら「古賀さんらしい」という声が聞こえてくるのも、重ねがさね嬉しい。
(田辺澄江)

 

6月 刊行予定

人形浄瑠璃文楽 外題[げだい]づくし

■鳥越文蔵=監修/北浦皓弌(こういち)=文楽勘亭流/人形浄瑠璃文楽座=企画・編集
■B5判変型/上製 328頁
■定価=本体3,000円+税
■2017年6月刊行予定

物語の深遠さ、情感に富んだ表情を見せる人形の美しさ、思わず引き込まれる太夫や三味線の迫力。今、人形浄瑠璃文楽は、国内外で静かなブームとなりつつある。本書は全152の演目タイトルを、勘亭流文字で網羅し、初演記録やあらすじなども掲載。文楽愛好家が待ち望んでいた決定版資料本。

フェア・パブ情報

 

ABC六本木店にて『文字と書の消息』記念フェア

---文字と書くことにまつわる本がズラリ

今月の新刊『文字と書の消息』の刊行を記念して、青山ブックセンター六本木店でブックフェアが始まりました。「ふたたび身体化のために」と題されたフェアでは、本書のなかで書影つきで言及される関連書籍20点以上が選書されます。これから入荷する本も多数あります。
神保町の東京堂書店2Fでは、本書著者・古賀弘幸さんのもう一冊の新刊『書のひみつ』(朝日出版社)を軸に、ブックフェアが開催される予定。『文字と書の消息』も展開していただきます。

 

『ゴジラ幻論』の反響続々

---熱い書評が続いています

2月刊行の『ゴジラ幻論』のパブが続いています。3月19日付朝日新聞では作家の円城塔さん、4月30日付東京新聞では評論家の切通理作さんによる書評が掲載されました。また、スピリチュアルブック専門店のブッククラブ回ニューズレターVol.105にて紹介され、香粧品科学研究開発専門誌「フレグランスジャーナル」2017年4月号でも書評が掲載されました。さらに東京大学出版会PR誌「UP」5月号では、著者の倉谷滋さんが寄稿しており、本書刊行への経緯を語っています。詳しくはそれぞれのリンク先へ。
また、ジュンク堂書店池袋本店7F理工書売り場で、倉谷さんの選書フェア「ゴジラ主義宣言」が5月末まで開催中。ゴジラのフィギュアが目印です。どうぞ足をお運びください。詳しくはこちら


kousakusha TOPICS

◆自動からくり人形作家「ムットーニ」こと武藤政彦さんの展覧会「ムットーニ・パラダイス」が、世田谷文学館で開催中(6月25日まで)です。これは世田谷文学館リオープンの記念企画展第一弾。人形の動きに合わせ、音楽、光、本人の語りが織りなす作品世界が繰り広げられます。作品集『ムットーニ・カフェ』もショップで販売。週末のギャラリートークではサインもOK。詳しくはこちら

『ゴジラ幻論』の著者・倉谷滋さんの著書『分節幻想』の書評が、日経サイエンス2017年4月号に掲載されました。評者は進化学者の三中信宏さん。「過去の膨大な文献資料をひもときつつ、そして著者を含めていま活躍中の研究者たちの業績をおりこみつつ、細部から大局を論じてはまた細部に分け入るスタイルは他に類を見ない力仕事である」と。詳しくはこちら

◆日本数学会の数学通信2017年2月号に『無限の天才』の書評が掲載されました。評者は数学者・高瀬幸一さん。「本書の興味深い所は、それが単なるRamanujanの伝記にとどまらず、Hardy の評伝を含んでいて、当時の英国の数学研究の雰囲気や、それに対する Hardy の立場が描かれていていることである」と。詳しくはこちら

◆ブッククラブ回ニューズレターVol.105の「はみだしレビュー」にて、『タオは笑っている』が紹介されました。「時に笑いながら、時に痛烈な風刺を交え、あらゆる角度からタオを浮かび上がらせます」と。詳しくはこちら

◆松岡正剛さんが4月15日(土)22時から放送の、NHK Eテレ対談番組「SWITCHインタビュー 達人達」に出演されました。対談相手は音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」のボーカル・コムアイさん。編集を手がけた『人間人形時代』や著書の『にほんとニッポン』も画面に映りました。「遊」バックナンバーの反響も多数! 詳しくはこちら

◆音楽に合わせて体を動かすことで脳機能の回復を目指す音楽運動療法の入門書『音楽運動療法入門』を増刷しました。音楽運動療法はフジテレビ「ザ・ベストハウス123」にて茂木健一郎さんが紹介し、話題となりました。詳しくはこちら

◆ライプニッツ通信IIの第21回「マサム夫人との縁」第22回「ジオコスモスの大転換」第23回「目のご馳走としての普遍学」が更新されました。詳しくはこちら

 

編集後記

今月の新刊『文字と書の消息』は、書にまつわるビジュアルも満載の、濃密な内容となりました。本文を読みながらそれらを眺めると、書き手の息遣いや手触りも浮かび上がってきます。「書くこと」や「書かれたもの」の不思議をあらためて見直す一書。読後は身の回りにある文字たちが、すこし違って見えるかもしれません。(葛生)

「清冽な書が記す紙の上を走る点・面の軌跡とは、こうした自然気の揺らぎをなぞる全身的行為の、二次元への投影なのではないのか。文字とは、自然と人間との、深々とした交感運動の結晶として生まれでたものではないか。」

―――杉浦康平『文字の霊力』「はじめに 文字の生息圏を歩く」より