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2018年4月4日号 
 

3月の新刊

Ibasyo

自傷する少女たち“存在の証明”

■岡原功祐
■四六判変型/フランス装 372頁(写真88頁)
■定価 本体2800円+税
■2018年3月30日刊行

5人の女性たちの自傷行為をめぐるフォト・ドキュメンタリー。「居場所」を求めながら、自らを傷つけずにはいられなかった彼女たちの細やかな心性に、気鋭の写真家・岡原功祐が光をあてる。

●●●担当編集者より●●●

2016年刊『ハンセン病 日本と世界』で知り合った写真家・岡原功祐さん。あるとき彼から、自傷する女性5人を密着取材した、写真と文章ドキュメントの感想を求められた。強烈なテーマに初めはたじろいだが、きづけば写真から目が離せず、緊迫感のある原稿を先を急いで読んでいた。
その後彼はコロンビアの麻薬戦争、原発事故後の福島を撮影するかたわら、「Ibasyo」と題した写真を5冊の手製本にまとめた。世界中の人から人へ渡していく“貸本プロジェクト”を実行したところ、戻った手製本には多くのメッセージが記されていた。今年で取材開始から14年、ようやく写真と文章の両方を出版する運びとなった。
心の動きや傷は外側から見えないものであり、むしろ隠すべきとさえ捉える向きもある。実家の自室、一人暮らしのアパート、恋人が留守の部屋……。誰もいない場所で彼女たちは、自らの体にひっそりと痕跡をのこす。秘匿されがちなこの主題に、写真家は向き合い、外界へとつなげようとした。自身も迷いや悩みを抱えながら綴ったドキュメンタリーが、たくさんの人のもとへ届けられれば幸いである。 (葛生知栄)

※3月23日に荻窪・6次元で開催された刊行記念イベントについては下の[イベント報告]へ。

 

4月 刊行予定

寛容とは何か 思想史的考察

■福島清紀
■A5判上製 392頁
■定価 本体3200円+税
■2018年4月中旬刊行予定

様々な対立によって引き裂かれた世界のなかで、寛容は共存の原理たりうるか? ヴォルテール、ジョン・ロック、ライプニッツ等の寛容思想の系譜を辿りながら、現代に問いを投げかける。

双頭の鷲 北條時敬の生涯

■丸山久美子
■四六判上製 260頁
■定価 本体2200円+税
■2018年4月下旬刊行予定

西田幾多郎、鈴木大拙から「生涯の恩師」として敬慕された北條時敬(ときゆき)。数学者として学問的スタートを切り、教育者として明治・大正・昭和を精力的に生きた加賀の巨傑の全貌を明らかにする。

イベント報告



2018年3月24日(土)荻窪・6次元
 『Ibasyo』刊行記念イベント

◆著者・岡原功祐さんによるトークイベント「写真家の居場所」が、荻窪のブックカフェ「6次元」で開催されました。その様子を担当編集者の葛生が報告します。

◆「1週間前には事前予約で満席となった当イベント。会場ぎっしりの参加者で賑わい、大盛況でした。トークでは岡原さんがこの企画を着想したきっかけ、取材時の心構えや心理的葛藤、写真・文章ドキュメントが完成してから出版にこぎつけるまでの苦労話などが語られました…」。工作舎アート・ディレクターの宮城登壇を記した全文はこちらへ


kousakusha TOPICS

◆デザイナー松田行正さんの最新刊『デザインの作法 本は明るいおもちゃである』(平凡社刊)に『文字と書の消息』(デザイン:佐藤ちひろ)を写真入りで紹介いただきました。詳しくはこちらへ。

『古書の森 逍遙』の著者、黒岩比佐子さんの『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』が2月にコミーより復刊されました。それを記念して、国立のGALLERY BIBLIO にて「井上孝治『想い出の街』写真展」が5月3日〜6日に開催されます。『古書の森 逍遙』も販売予定。

◆web連載「ライプニッツ通信II」第34回 パスカルからライプニッツへを更新。『ライプニッツ著作集』第II期第3巻から、第I期の監修者の一人、原亨吉先生の想い出まで。

◆web連載「ルネサンス・バロックのブックガイド」は、第10回 ポール・アザール 『ヨーロッパ精神の危機』を気鋭の初期近代思想史家、加藤喜之さんが、第11回 テスター 『西洋占星術の歴史』を翻訳者の山本啓二氏自らが紹介します。山本氏は『地球外生命論争 1750-1900』の訳者の一人です。

【編集後記】工作舎では月に1冊出るか出ないかの新刊が、4月は珍しく2冊刊行するので大わらわです。5月には『ライプニッツ著作集』第II期完結となる第3巻『技術・医学・社会システム』、その後、四方田犬彦氏の書下し、松岡正剛氏の本と、話題作の予定があがっています。順調に刊行できるかどうかは、編集・制作陣の頑張り次第。ぜひエールをお送りください。 (岩下)