■古賀弘幸=著
■A5判変型/上製 308頁
■定価=本体3,200円+税
■2017年5月15日刊行
漢字を敬いながら、単純化を試みたり、複雑な新作文字を生みだす漢字文化圏の人々。路地裏の落書きにも潜む書き手の息づかい。重ね書きで往代の滲みと重層させる書の方法や、身体を書と同化するパフォーマンス書道も人気を集める。生命力溢れる文字の豊かさと広がりを縦横無尽に物語る文化誌。
●●●担当編集者より●●●
子どもの頃からの鉛筆書きが、私の右手の中指に“ペンだこ”を棲まわせた。キーボードに順応して久しい今も、その面影は消えない。
「ふたたび身体化のために」と題して、『文字と書の消息』刊行記念ブックフェアが、東京・六本木の青山ブックセンターで始まる。著者の古賀弘幸さんは、編集者でもある。文字や書に関する本づくりの世界では、知る人ぞ知る存在であり、杉浦康平さんなども厚い信頼を寄せる。そんな古賀さんによる10年を超える月刊誌への連載の全貌を把握するのは難しいが、暗黙裡の協力体制のもと、一度ばらばらにして組み立て直すことにした。場所に棲む文字、漢字を取り巻くドラマ・・・一話ずつが集いはじめ、連続し、章ごとに新たな読み物になってゆく。こうして束ねられた本文を、遠く丹波の工場で製造される加工紙がくるむ。色あいが経年変化するというので、すでにある程度変化を重ねてきた製品を取り寄せた。
初めての単著ながら「古賀さんらしい」という声が聞こえてくるのも、重ねがさね嬉しい。
(田辺澄江)