三つの脳の進化 新装版
反射脳・情動脳・理性脳と「人間らしさ」の起源
■ポール・D・マクリーン
■法橋 登=編訳・解説
■四六判/上製 316頁
■定価 本体3400円+税
■2018年2月28日刊行
人間の脳は長い生物進化の歴史を内臓し、爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳の相互作用で働くとするポール・マクリーンの「三位一体脳モデル」。各界を震撼させた理論の全貌が、新装版で甦る。
●●●担当編集者より●●●
P・マクリーンの名前とその三位一体仮説については、ずいぶん昔から気になっていた。ジェインズのバイキャメラル・マインド説やプリブラムのホログラフィ論とともに、脳の不思議に分け入るためのまたとない地図でもあった。ケストラーやセイガンによる紹介によって、三位一体脳は、戦争や差別から個人による犯罪まで、人類悲劇の解決しがたい根拠とされた。「悪の起源」であるかのような言説も流布していた。訳者の法橋から本書の存在を知らされるまで、当のマクリーンによる三位一体仮説の一般向解説書があることを知らなかった。もちろんすぐに翻訳出版は実現することになる(初版1994年)。しかし実は、マクリーン自身は脳の悲劇性を訴えているわけではなかった。むしろ読了後には、ウマの脳や情動脳とも呼ばれる大脳辺縁系は、人間の行動や思考に豊かなニュアンスを与えるものだという印象が残る。個人的には、それは編集脳でさえあると考えるようになった。一筋縄ではとらえがたい人間の性(さが)を考えるためにも、新装版として蘇った本書を、近刊、福島清紀『寛容とは何か』と併読することをお勧めしたい。(米澤敬)