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2019年3月13日号
 

2月の新刊 その1


ルネサンス・バロックのブックガイド
印刷革命から魔術・錬金術までの知のコスモス

■ヒロ・ヒライ=監修
■A5判 280頁
■定価 本体2800円+税
■2019年2月27日刊行

良書を次世代にも伝えたい。 占星術や錬金術、魔術が興隆し、近代科学・哲学が胎動したルネサンス・バロック時代。この時代を象徴する原典の邦訳書から最新の研究成果まで総数150冊余の書物を、ヘルメスの図書館につどう50名をこえる執筆者が紹介する。

●●●担当編集者より●●●

ルネサンス学者のヒロ・ヒライさんとはじめてお会いしたのが、2004年。ヒライさんが主宰する学術ウェブサイトbibliotheca hermetica(ヘルメスの図書館の意、略称BH)のミーティングが東京大学駒場キャンパスで開催されたときです。当時は駒場の隣に社屋があり、刊行したばかりのパラケルスス『奇蹟の医の糧』を売りにいったのでした。若手研究者の集まりに、高名な科学史家も顔を出し、期待に満ちた会でした。 編集者・二宮隆洋さんと工作舎の本で育ったと公言するヒライさんゆえに、その後の折々でBHと工作舎の相性の良さを実感し、ようやく本の形になりました。
生まれる前の刊行というウォーカー『古代神学』を見事に紹介した大学院生をはじめ、執筆陣の多くは若手研究者。ここから羽ばたいていく書き手の存在を予感させ、将来が楽しみです。 (岩下祐子)

※2019年3月9日 ジュンク堂書店池袋本店にて監修者のヒロ・ヒライさんと山本貴光さんの刊行記念トークイベントを開催しました。詳しくは下の[お知らせ]へ。

 

2月の新刊 その2


薔薇十字の覚醒 新装版
隠されたヨーロッパ精神史

■フランセス・イエイツ
■山下知夫=訳
■A5判上製 444頁+図版32頁 定価 本体5000円+税
■2019年2月25日刊行

新旧キリスト教の抗争渦巻く17世紀ヨーロッパに出現した薔薇十字宣言。魔術とカバラ、錬金術を内包したそのユートピア思想は、もうひとつのヨーロッパ精神史を形づくっていた…。永らく品切だったイエイツの名著、待望の新装復刊。

●●●担当編集者より●●●

本書の旧版は1986年の第1刷以降、第5刷まで売り伸ばすことができた。その後、雌伏して時の至るのを待っていたわけだが、実はその間、某大手出版社から文庫化のオファーを受けたりもした。旧版でも「薔薇十字宣言」のページは、特赤の色刷りになっている。別丁の図版ページは特別の色紙を使用している。こんなに手をかけた我が子をそう簡単に手放すわけがない。今回の新装版は、本文の仕様はそのままに(図版ページの色紙を緑から青に変更したが)、旧版以上に手をかけたブックデザインとなった。読者のみなさまが受け入れてくださることを切に願います。最後にひとつ思い出話を。旧版の制作時、印刷所で、前出の「薔薇十字宣言」の色刷り立ち会いをした。そのとき、隣の印刷機でも同じように本文の色刷りが行われていた。刷り上がった色校にふと目をやると、深い緑で刷られている。それはなんと澁澤龍彦の『犬狼都市』(桃源社版)だった!(石原剛一郎)

 

近刊情報


ライプニッツ著作集 第I期 新装版
[6]宗教哲学[弁神論…上]
[7]宗教哲学[弁神論…下]

■G・W・ライプニッツ
■下村寅太郎+山本 信+中村幸四郎+原 亨吉=監修
■佐々木能章=訳
■[6]A5判上製 352頁+手稿8頁 定価 本体8200円+税
■[7]A5判上製 336頁+手稿8頁 定価 本体8200円+税
■2019年3月25日刊行予定(2冊同時発売)

政治的にも宗教的にも混迷をきわめた17・18世紀のヨーロッパにあって、「この世になぜ悪は存在するのか」を問い続けたライプニッツ。ライプニッツの聡明な弟子にして庇護者でもあったプロイセン王妃ゾフィー・シャルロッテ追想の書としてライプニッツが生前に刊行した唯一の哲学書。
[6]序文、緒論、本論「神の正義、人間の自由、悪の起源について」第2部まで、[7]第3部、附論3編、ラテン語文「神の大義」。

お知らせ

『ルネサンス・バロックのブックガイド』
イベント報告&読売新聞&クラウドファンディング御礼

◆『ルネサンス・バロックのブックガイド』刊行記念として、2019年3月9日(土)ジュンク堂書店池袋本店にてトークイベントを開催。上野の森美術館「世界を変えた書物展」や印刷博物館「天文学と印刷展」などの関連イベントにも登壇し、当時の書物に高い関心をお持ちの山本貴光さんをゲストにむかえ、監修者ヒロ・ヒライさんと語り合いました。早くから満員御礼となり、当日にはキャンセル待ちの方も。イベント最後には、BHが若手研究者を奨励するための「ミクロコスモス大賞」授賞式、登壇者お二人のサイン会も行われ、会場は熱気にあふれていました。

◆その翌日3月10日には、読売新聞書評欄「読書情報」に。「…中世の魔術的・怪物的な知が、近代の理性に取って代わられるまでの変遷を様々な角度から眺めることができる。良書を次世代に伝えたいという思いにあふれた1冊」[全文は読売新聞公式サイトへ]

◆本書プロモーションのためのクラウドファンディングは2月15日に無事終了しました。予想を遥かに超えた多くの方から支援をいただき大成功となりました。詳しくはこちら。

kousakusha TOPICS

◆日本文学研究者のドナルド・キーンさんが亡くなられました。人形浄瑠璃文楽に造詣が深く、『人形浄瑠璃文楽 外題づくし』(2017年刊行)帯推薦文を寄せてくださいました。帯には「勘亭流文字の美しさは比類なく、今の時代を生きている」と。こちらへ。

『ICTエリアマネジメントが都市を創る』が1月30日付建設通信新聞に「官民協働の多角的取組み紹介」。

◆2月17日付南日本新聞にて、松岡正剛著『遊読365冊』評。「…幅広いジャンルの本365冊の情報が収録されている。しかも全て、わずか100字前後の解説で紹介されているのだ。内容はもちろん、その本の持つ熱量や影響力までもが短い文章の中に表現されている 」(吉村弥依子氏、かごしま近代文学館学芸員)

◆パナソニック汐留ミュージアムにて開催中の子どものための建築と空間展(〜3月24日)。F・L・ライトの自由学園(1921)や 谷口吉郎の慶応義塾幼稚舎(1937)などと並んで象設計集団の宮代町立笠原小学校(1982)も紹介。『空間に恋して』も販売しています。

◆3月6日〜3月24日、大阪 豊中市・blackbird booksにて岡原功祐写真展『Fukushima Fragments』開催中。『Ibasyo』も販売中。

◆3月15日より東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTギャラリーにて「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」がはじまります。タイガー立石作品も展示され、ミュージアムショップでは『TRA』『ムーン・トラックス』を販売します。

◆営業のアルバイトを1名募集します。3月31日(日)締切。詳細はこちらをご覧ください。

【編集後記】クラウドファンディングはおかげさまで大成功。しかし、発送するときに予想外のことが! 昨年からの宅配便・郵便業者の値上げ、効率化の影響をモロに受けたのです。
荷物の大きさと料金表をにらめっこして、本1冊の場合は郵便局の「ゆうメール」が最適と判断。宅配便と違い、料金の地域差もなく全国一律300円(500gまで)は最安値で大変お得。やっぱり郵便はいいねと、喜んだのもつかの間、郵便局が集荷に来てくれないことがわかりました。実は最近まで集荷してくれたのですが、それはドライバーの厚意だったそうで、法人相手の場合、ゆうパックは集荷するけれど、郵便は窓口へ。歩いて7〜8分にある本局へ台車で運びましたが、延べ3往復。本を送るのも大変な時代になりました。(岩下)