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2019年6月4日号
 

5月の新刊 1

哺乳類の卵
発生学の父、フォン・ベーアの生涯

■石川裕二
■四六判上製 176頁 定価 本体2000円+税
■2019年5月21日刊行

進化論もiPS細胞も、ここから始まった。生殖医療では人間の卵子を日常的に取り扱う。ここに至るまでには発生学の長い歴史があった。近代発生学の父であり、再生医療や進化発生学の原点を創出したフォン・ベーアについて平易に解説した、本邦初の評伝。

●●●担当編集者より●●●

ダーウインやメンデルほどには一般には知られてはいませんが、フォン・ベーア(1792-1876)は、「進化」をテーマとする本には、必ずといっていいほど登場するキーパーソンです。故国エストニアでは、紙幣デザインにその肖像が採用されるほどの科学的英雄でもあります。ダーウィンをはじめとして、古生物学のスティーヴン・ジェイ・グールドから人智学のルドルフ・シュタイナーまで、分野を越えてベーアの思想に影響を受けた人は多く、「哺乳類の卵子の発見」をはじめとする胚発生の研究は、iPS細胞等の最新の再生医療の礎にもなっています。『哺乳類の卵』は、そんなベーアの実像を、一人でも多くの人に知って欲しいという著者、石川裕二氏の想いが結実した一冊です。19世紀のヨーロッパの時代状況を背景に、発生学の創始者であるとともに、動物学者、人類学者、地理学者、探検家、そして類い稀な博物学者だったとも評価される、ベーアの多彩でユニークな活躍が生き生きと描き出されます。(米澤 敬)

 

5月の新刊 2

ライプニッツ著作集 第I期 新装版
[3]数学・自然学

■G・W・ライプニッツ
■下村寅太郎+山本 信+中村幸四郎+原 亨吉=監修
■原 亨吉+横山雅彦+三浦伸夫+馬場 郁+倉田 隆+西 敬尚+長島秀男=訳
■A5判上製 624頁+手稿8頁 定価 本体17000円+税
■2019年5月25日刊行

微積分学を創始し、二進法や位置解析の道をひらき、デカルトの力学を超える動力学を創出した数学・自然学分野の主要論考を編む。『すべての数を1と0によって表わす驚くべき表記法…』『微分算の歴史と起源』『自然法則に関するデカルト…たちの顕著な誤謬についての簡潔な証明』ほか収録。

●●●担当編集者より●●●

第I期『ライプニッツ著作集』新装復刊第5弾は、全10巻のなかでも頁数においても内容においても超弩級の3『数学・自然学』。 「数学」では壮年期以降の位置解析の創始や二進法の考案、超越曲線の作図法から最晩年の自らの微分算探究プロセスの総括までを収録。 原亨吉先生が随所に挿入された付録や精緻な解説により、ニュートンはじめ同時代の研究者との交流の機微が明かされます。 「自然学」ではデカルトを超える動力学の創始や天体運動論、光学の原理など。 宮廷人として多忙な日常を送りながら、無限にひろがる未知の領野を自らの思考力をたのみに切り拓いてゆくライプニッツの昂揚感をぜひ追体験してください。(十川治江)

 

近刊情報

社会実装の手引き
研究開発成果を社会に届ける仕掛け

■JST-RISTEX[研究開発成果実装支援プログラム]=編
■四六判並製 248頁 定価 本体1200円+税
■2019年7月初旬刊行予定

こども、高齢者・弱者支援、環境問題など生活に深く関わる問題を解決していくためには研究開発だけでなく、それを普及させる「社会実装」が大切。48の実例とともに「社会実装」を知る1冊。

 

増刷情報

怪奇鳥獣図巻
大陸からやって来た異形の鬼神たち

■伊藤清司=監修・解説
■A5変型上製 152頁 定価 本体3200円+税
■2019年6月下旬 3刷出来予定

白澤、龍馬、九尾狐、狒狒、貘……全76種の中国妖怪カタログ「怪奇鳥獣図巻」。中国古代の博物誌『山海経』からの引用を中心に、江戸の絵師によって描かれた極彩色の絵巻物。長らく品切でしたが、ついに待望の復刊! 妖怪ビジュアル本が好きな方におススメです。

kousakusha TOPICS

◆5月13日〜6月14日、ブックファースト新宿店恒例の「蔵出し本」フェア開催中。人文系出版社の僅少本を展開する大がかりなフェアで、昨年に続き30点出品。売れ行き良好のため追加注文をいただきました。

◆6月8日から京都読者謝恩ブックフェアがはじまります。出版梓会に所属する27社が参加し、大垣書店イオンモールKYOTO店、ふたば書房ゼスト御池店、同志社大学生協今出川、立命館大学生協衣笠の4店舗で、限定特価で販売します。ぜひお出かけください。

◆栗田秀法さんが町田市立国際版画美術館で開催中の「THE BODY—身体の宇宙—」展をめぐるエッセイで『ルネサンス・バロックのブックガイド』に言及されたことを皮切に、ヒロ・ヒライさんが「獣帯人間 ルネサンスの医学と占星術にみる小宇宙としての身体」を寄稿。そして、工作舎も展覧会レポート。コラボ企画として、展覧会の招待券プレゼント、6月9日にはガイドツアー開催。6月11日の『ルネサンス・バロックのブックガイド』のオンライン読書会情報も。

『バロックの神秘』訳者の松本夏樹さんの講座「カバラ的教示画の図像学」がはじまります。第1回は6月16日15時〜、第2回は9月22日。詳細はこちら。

『ライプニッツ著作集 第I期 新装版[3]数学・自然学』ウラゲツ☆ブログでご紹介いただきました。

◆森田真生さん新刊『数学の贈り物』(ミシマ社)の中で、ヴァレラとライプニッツに言及。とりわけヴァレラ『身体化された心』について「デカルト以来三百年の科学と哲学の歴史を振り返りながら、西洋の近代的思惟の盲点を暴いていく」と。詳しくはこちら。

【編集後記】グラフィック・デザイナーの杉浦康平先生が、2019年春の叙勲にて旭日小綬章を受章されました。心よりお祝い申し上げます。ブックデザイン史に残る『人間人形時代』をはじめ、『多主語的なアジア』など「デザインの言葉」シリーズを刊行させていただきました。なかでも『宇宙を叩く』は美しい本。とSNSで発信したところ大反響が! バズるとはこのことかと。杉浦先生は目下、御年86歳ながら「デザインの言葉」シリーズの「ブックデザイン」をテーマにした最新刊に取り組んでいらっしゃいます。お楽しみに!(岩下)