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2019年10月11日号
 

9月の新刊 1

従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行「──およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか? という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語

略称:従軍中のウィトゲンシュタイン

■谷 賢一
■四六判 184頁 定価 本体1400円+税
■2019年9月4日刊行

気鋭の劇作家・演出家、谷賢一による、哲学者ウィトゲンシュタインの若き日を描いた戯曲。『論理哲学論考』を読んだ方、挫折した方におすすめの物語。

●●●担当編集者より●●●
2013年に初演された演劇作品の戯曲を収めたものです。1982年生まれの作家にとって間違いなく前期代表作のひとつであり、10年後、20年後も古びないだけの力があり、劇場の外の読者をも惹きつける普遍的な魅力があると信じて出版しました。
戯曲で読む、前期ウィトゲンシュタイン。
文系でも読める、『論理哲学論考』爆誕前夜のドラマ。
ページをひらいて、読者の皆様の脳内でごゆっくりと上演をお楽しみください。(李 栄恵)

*11/9 刊行記念トークイベント開催。下の[イベントのお知らせ]をお読みください。
*9/25 毎日新聞「文芸時評」で批評家の大澤聡さん紹介。

 

9月の新刊 2

ライプニッツ著作集 第I期 新装版
[9]後期哲学

■G・W・ライプニッツ
■下村寅太郎+山本 信+中村幸四郎+原 亨吉=監修
■西谷裕作+米山 優+佐々木能章=訳
■A5判上製 456頁+手稿8頁 定価 本体9500円+税
■2019年9月28日刊行

ライプニッツ哲学のエッセンス「モナドロジー」をはじめ、ニュートンの代弁者クラークとの最晩年の論争まで、自然学と不可分の思想を編成。「理性に基づく自然と恩寵の原理」ほか。

●●●担当編集者より●●●
第I期『ライプニッツ著作集』新装版の復刊は、おかげさまで順調に進み、このたび円熟期のライプニッツの普遍精神の粋を集成した9『後期哲学』を上梓できました。
11月刊行予定の1『論理学』をもって、全10巻勢揃いです。
第I期を編集していたおりは、各論考を追うことに精一杯で、それを記しているライプニッツの日常的背景などには想像もおよびませんでしたが、第II期全3巻を完結したことで、宮廷人としての公務に多忙ななか、全方位にわたる考究を重ね、多彩な人脈との交信を続けた凄まじさが実感できるようになりました。
9『後期哲学』に収載したのはマサム夫人の父、R・カドワースの思想を論じた「生命の原理と形成的自然についての考察」にはじまり、珠玉の名編「モナドロジー」と「理性に基づく自然と恩寵の原理」など。最晩年に交わしたニュートンの代理人「クラークとの往復書簡」では、後にE・マッハやA・アインシュタインに引き継がれることになるライプニッツ独自の時空論が展開されます。(十川治江)

 

10月の新刊予定

女王の肖像
切手蒐集の秘かな愉しみ

■四方田犬彦
■四六判上製 300頁 定価 本体2500円+税
■2019年10月末刊行予定

さらば帝国、植民地。されど切手は後まで残る。英国ヴィクトリア女王の肖像から始まり、国家の名刺であるとともに、人を堕落させ、広大な幻をも現出させる蠱惑的な紙片、郵便切手をめぐるエッセイ集。

*10/28 刊行記念トークイベント開催。下の[イベントのお知らせ]をお読みください。

イベントのお知らせ

10/26・27 神保町ブックフェスティバル

◆恒例の神保町ブックフェスティバルが2019年10月26日(土)・27日(日)の2日間にわたり開催されます。すずらん通りで出版社らによるワゴンセール「本の得々市」が開かれ、工作舎も出店します。限定特別価格でさまざまな本を準備中。

◆例年好評な紙型もレオーニ『平行植物』と荒俣宏『理科系の文学誌』をご用意。加えてレオーニ写真の亜鉛凸版も出品。1点限りですのでお早めにお求めください。場所は東京メトロ・神保町A7出口近く。揚子江菜館が目印です。

10/28 下北沢・本屋B&B
四方田犬彦×木村紅美トークイベント

『女王の肖像——切手蒐集の秘かな愉しみ』とほぼ同時期に四方田さんは『聖者のレッスン──東京大学映画講義』(河出書房新社)も刊行されます。そこで2冊の刊行を記念して、2019年10月28日(月)20時から下北沢・本屋B&Bにて、著者の四方田犬彦さんと小説家の木村紅美さんのトークイベント「先生、まだ切手を集めているのですか?」を開催します。かつて明治学院大学で四方田さんに師事していた小説家の木村紅美さんに、切手蒐集の魅力を四方田さんから聞き出していただきます。

◆当日、イベントに参加され、B&Bで『女王の肖像』を購入された方には、工作舎で特別にデザインした架空の切手(インド洋上に浮かぶ独立国GORKY ISLANDが発行した普通切手。GORKY ISLANDとは四方田さんの本名にちなんだ架空の国。切手の絵柄は四方田さんの指定による)を表紙裏の見返しに貼り、さらに特製の消印を押した限定記念本をお作りします。

◆また、イベント当日に限って、四方田さんの提供による自著の絶版・品切れ本(サイン入り)の販売も行います。 詳しくはこちらへ。

11/9 田原町・Readin’Writin’ BOOKSTORE
谷 賢一×北村紗衣トークイベント

『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』を記念して、2019年11月9日(土)19時から、田原町・Readin’Writin’ BOOKSTOREにて、著者の谷賢一さんと、『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』(書肆侃侃房)が好評の北村紗衣さんによる刊行記念トークイベント「『従軍中のウィトゲンシュタイン』語りえぬことを語る夜」を開催します。

◆シェイクスピアや舞台芸術史の研究者として多くの演劇を観てきた北村紗衣さんは、舞台『従軍中のウィトゲンシュタイン』をご覧になって、その年のベスト3のひとつに推してくれました。演劇人の谷賢一さんと、古典演劇の解釈や上演文化を研究する北村紗衣さんとの対話をぜひお聞きください。小さなスペースなのでご予約はお早めに。詳しくはこちらへ。

◆11月1日より、Readin’Writin’ BOOKSTOREでは工作舎フェアを1ヶ月開催予定。

kousakusha TOPICS

◆2019年9月26日より山口市にある中原中也記念館 開館25周年記念展「ムットーニからくり文学館」開催中。中原中也「サーカス」を題材にした新作も。ショップでは『ムットーニ・カフェ』販売しています。

◆理研と編集工学研究所が選りすぐりの科学の良書を選ぶ「科学道100冊2019」。選書委員には倉谷滋先生も。100冊の中に『賢治と鉱物』 を選んでいただきました。9月26日よりジュンク堂書店池袋本店1Fと7Fで「科学道100冊 2019」フェアを開催。特製リーフレット配布あり。

◆同じくジュンク堂書店池袋本店の4F人文書売り場では、工作舎僅少本フェアがいよいよ10月末まで。4F人文書カウンター横です。「遊」バックナンバーをはじめ、版元蔵出し本多数。

◆三省堂書店神田神保町本店5F理工フロアにて、「秋の標本箱—知のワンダーランド—」フェアを開催中。図鑑から幻想ものまでズラリと並びます。工作舎の本では『ビュフォンの博物誌』『大博物学者ビュフォン』『キルヒャーの世界図鑑』『植物の神秘生活』『平行植物』『賢治と鉱物』。10月末まで。

『近未来モビリティとまちづくり』新建築2019.10月号書評。「…最近では「移動自体を楽しむ」という価値観の転換(JR九州のクルーズトレインなど)が起こっており、次世代モビリティ社会には利便性だけではなくこうした「幸福感」が重要だと語られる。」

ウラゲツ☆ブログ『ライプニッツ著作集』第I期新装版 第9巻『後期哲学』をご紹介いただきました。「「モナドロジー」は…〔ライプニッツ〕の最晩年の思想を全般的かつ簡潔に示したものであり、彼の「哲学的遺著」といわれている。」

「ゲンロン10」の小特集「AIと人文知」。そのなかの山本貴光さんと吉川浩満さんによるブックガイド「人工知能と人文知を結ぶ15の必読書」で『ライプニッツ著作集』第10巻『中国学・地質学・普遍学』を挙げていただきました。

◆web連載「アルス・ロンガ」第4回「不在による現前」では、空の椅子を描いたゴッホ、ピカソ、シーガルを考察。空の椅子のモティーフはキリスト教図像「空の御座」に起源を持ち、不可視のキリストの現前を意味します。

【編集後記】秋はイベントが盛りだくさん。その筆頭は神保町ブックフェスティバルでしょうか。数年前までは文化の日を含む3日間開催され、ものすごい人出と売上になったこともありましたが、今年は昨年同様10月末の2日開催。実行委員会によると、ゴミ回収や交通整理を担う大学生ボランティアが大学祭とぶつかるため、日程をずらしたのだそうです。こうした運営体制に支えてもらっているのだ、と感謝。
2日開催になっても年々熱気は増すばかりです。工作舎では編集もデザイナーも売り子に立っています。ぜひ声をかけてみてください。(岩下)