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2019年11月22日号
 

10月の新刊

女王の肖像
切手蒐集の秘かな愉しみ

■四方田犬彦
■四六判上製 300頁 定価 本体2500円+税
■2019年10月29日刊行

さらば帝国、植民地。されど切手は後まで残る。英国ヴィクトリア女王の肖像から始まり、国家の名刺であるとともに、人を堕落させ、広大な幻をも現出させる蠱惑的な紙片、郵便切手をめぐるエッセイ集。


●●●担当編集者より●●●
切手蒐集家の重要なアイテムのひとつに「初日カバー」がある。切手の発行日に、その切手を貼った封筒に郵便局で消印を押してもらったものだ。本書の刊行間際、読者サービスでこれをやったら面白いのではと思いついた。架空切手を発行し、それを裏見返しに貼って、特別の消印を押す。つまり「初日カバー本」をつくるのである。四方田氏も「それは面白い!」と賛同してくださり、さっそく切手制作に取り掛かった。
発行国は四方田氏の本名をもじった「ゴーキ・アイランド・リパブリック」。貨幣単位は「Yomo」。建国66周年記念切手である。四方田氏からは希望する絵柄として、世界各国の旅の写真が送られてきた。その中から豊穣神アルテミスと、リヨンで賞味したケーキをフィーチャーした架空切手2種を制作。さらにオリジナルの工作舎消印を作り、銀色で押すことにした。完成した初日カバー本が放つ魅力のほどは、工作舎HPで。このサービスを希望される方は、メールでお問い合わせを。(石原剛一郎)

*10/28 刊行記念トークイベント開催。下の[イベント報告]をお読みください。

 

11月の新刊

地球外生物学
SF映画に「進化」を読む

■倉谷 滋
■四六判上製 240頁 定価 本体2000円+税
■2019年11月21日刊行

エイリアンは植物か? 物体Xの常軌を逸した形態形成能とは? ソラリスの海、ウルトラ宇宙怪獣…SF映画・小説に登場する地球外生物の生態の謎に、進化発生学者が挑む。


●●●担当編集者より●●●
ゴジラの次は宇宙生物である。他にも「怪獣学」の新書まで上梓している。バリバリの進化発生学者でありながら、この連打。論文もけっこう書いているようであるし、著者のエネルギーには舌を巻くしかない。SF、怪獣映画は、A級からC級まで、細部にこだわりながら見倒しまくっている。それだけではない。実はミステリ作品も預かっているのだ。「忙しい人ほど時間がある」との寸言も、倉谷さんを見ていると納得できる。読書量も半端ではなさそうだ。
『進化する形』では発生学者、C・H・ウォディントンをかなり評価していたが、先日来社した折りには、かつて工作舎から刊行したウォディントンの『エチカル・アニマル』まで読み込んでいた。そのときにはまた、発生学をめぐるある話題で盛り上がった。次回作の企画になるかもしれない。今度は、正真正銘の生物学の一冊になるはずだが、詳細は秘密。ヒントはやっぱり「シン・ゴジラ」と「エイリアン」にあり。乞うご期待。(米澤 敬)

 

近刊情報

ライプニッツ著作集 第I期 新装版
[1]論理学

■G・W・ライプニッツ
■下村寅太郎+山本 信+中村幸四郎+原 亨吉=監修
■澤口昭聿=訳
■A5判上製 416頁+手稿8頁 定価 本体10000円+税
■2019年11月27日刊行

ライプニッツ生涯の企画書といわれる「結合法論」、「普遍的記号法の原理」「概念と真理の解析についての一般的研究」など、普遍学構想の基盤となる記号論理学の形成過程を追う。

熨斗袋
選ぶ 書く 伝わる

■川邊りえこ
■A5判上製 77頁
■2019年11月28日刊行

筆で書くと、想いが届く。人間関係を大切にする心を表す熨斗袋。書道家の著者が、筆書きの作法、水引の結びの意味、熨斗袋にまつわる歴史や慣習などを紹介する。

イベント報告

10/28 四方田犬彦×木村紅美トークイベント

◆下北沢の、本屋B&Bにて四方田犬彦さんの新刊 『女王の肖像──切手蒐集の秘かな愉しみ』(工作舎)と『聖者のレッスン──東京大学映画講義』(河出書房新社)刊行記念トークイベントを開催しました。四方田さんの教え子であり、小説家の木村紅美さんに聞き手になっていただき、切手蒐集話から、切手史に至るまで、本書の内容を凝縮したようなトークで、あっという間の1時間半でした。

◆トーク後のサイン会では、イベント参加特典の、架空切手シール&工作舎スタンプが大好評。切手シール&スタンプを貼り付け、押印した本書をご希望の方は、工作舎に直接ご注文ください。


11/9 田原町・Readin’Writin’ BOOKSTORE
谷 賢一×北村紗衣トークイベント

◆谷賢一さんの戯曲『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』出版記念トークイベントを田原町の本屋Readin’ Writin’で開催。谷さんは、9月に「福島三部作」公演を終え、戯曲『福島三部作』(而立書房)も当日先行発売されました。

◆トークのお相手は『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』(書肆侃侃房)が話題の、フェミニスト批評家・シェイクスピア研究家の北村紗衣さん。本作は谷さんご本人もかなりの自信作で、シェイクスピアのように戯曲が時代を超えて残っていくこと、出版への想いを語られました。『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』の全員女性での公演も良いかもしれない、と北村さん。ロフト席もある会場は満席。お客様からの質問も多数飛び交い、谷さんのよく通る声も相まって、熱気のあるイベントでした。

◆Readin’ Writin’では、11/30まで工作舎フェアも開催中。イベントで配布した「谷賢一のおすすめ本&関連本プチガイド」冊子もお店にございますので、ご希望の方はお申し出ください。

kousakusha TOPICS

◆11/29三省堂書店池袋本店にて、倉谷滋著『怪獣生物学入門』(集英社インターナショナル新書)重版記念トークイベントが開催されます。ゲストは樋口真嗣監督。工作舎の新刊『地球外生物学』も販売していただきます。

『女王の肖像』がネットで相次いで紹介されました。
山本善行氏は「第二回 古本屋稼業十年目の呟き」「…古本屋にぴったりの本だと思った。集める人が増えていけば、本を集める人も増える、そう都合よく考えたい。」
画家の林哲夫氏は、ブログ「…切手を集めたことがなくても、面白く読める一冊である。」
こちらへどうぞ。

◆11月末発売の哲学雑誌「フィルカル」最新号Vol.4 No.3の特集は「『論理哲学論考』と文化をつなぐ誌上ブックフェア」。ウィトゲンシュタイン研究者、鬼界彰夫氏の特別寄稿『従軍中のウィトゲンシュタイン(略)』書評論文掲載。

『近未来モビリティとまちづくり』建築技術2019.12月号書評。「…モビリティは単なる移動だけではなく、ライフスタイルだと見るべきではないかという著者の視点は面白い。」詳しくはこちらへ

◆11/24文学フリマにて発売される、機関精神史二号」〈特集「観念史の破壊」〉では、ヒロ・ヒライ氏インタビューほか、『ルネサンス・バロックのブックガイド』関係者の記事多数掲載。詳細はこちらへ

日本ライプニッツ協会第11回大会が11/23、東京大学本郷キャンパスにて開催されます。発表者は『ライプニッツ著作集第II期』訳者である、今野諒子、大西光弘、池田真治の3氏。池田氏は『ルネサンス・バロックのブックガイド』にも寄稿。

◆web連載「アルス・ロンガ」第5回「美術家記念の総合芸術」。デンマークの彫刻家トルヴァルセンを記念する美術館を例に、作品、墓が一体となった総合芸術を紹介。その背景にある美術家の神格化を読み解きます。

【編集後記】
●初めまして、営業の門谷風花と申します。今回からメールニュースを担当いたします。工作舎に入社して半年経ちまして、ようやく仕事にも慣れてきました。神保町ブックフェスティバルと、トークイベント2件も無事終わり一息ついたところです。
●ところでわたしは映画を観るのが好きなのですが、先月、山形国際ドキュメンタリー映画祭に行ってきました。四方田さんも映画祭にいらっしゃると聞いたので、出来上がったばかりの『女王の肖像』クロス装のカバー見本を見ていただこうと、台風の中持って行ったのですが、現地では映画を観るのに忙しく結局お会いできず…。四方田さんには、映画祭終わりに舎に立ち寄っていただきました。(今秋の台風も大変な被害でした。被災された方々に、お見舞い申し上げます。)
●映画本といえば、新刊『地球外生物学』も注目です。生物学者である倉谷滋さん独自の視点で、エイリアンを中心に、SF映画の異星生物や、特撮映画の中の怪獣について論じられています。書店さんでは理工コーナーにあるかと思いますが、映画ファンの方々にもぜひ読んでいただきたいです。
(門谷)