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2020年10月20日号
 

9月の新刊

図解き 論理的哲学史逍遙
ポルフィリオスの樹にはじまる

■山下正男
■四六判/上製 240頁 定価 本体2400円+税
■2020年9月11日刊行

古代ギリシア論理学 & 哲学のエッセンスを示す図「ポルフィリオスの樹」。その図は、中世神学全盛期をへて、近代科学の誕生、記号論理学や論理実証主義の発展など、西洋思想史をつらぬいてきた。この抽象構造をめぐる。


●●●担当編集者より●●●
山下先生とのご縁は、1980年代半ばにライプニッツ著作集第I期10巻収載「中国学」の翻訳依頼のため京都大学人文研究所にうかがって以来のこと。同書の2刷をお送りしたのが2001年の6月で、その後ご連絡さしあげる機会もなく過ごしていました。2019年1月、同書の新装版をお送りして間もなく、手書き文字の原稿が送られてきました。文体は「です」「ます」調で読みやすく、冒頭は西田哲学への痛烈な批判……。一読するだけでは着地点がわからず、おおいに迷いました。ところが、編集をすすめるうちに、ふっと先生独得のヒューモアと首尾一貫した論旨を体感できるようになりました。現在89歳にして次作を執筆中とのこと。(十川治江)


*十川が、本書のための関連図書リスト「論理的思考に遊ぶ」を選書しました。ブックファースト新宿B1 Bゾーン人文 西洋哲学棚にてミニフェア開催中。

 

10月の新刊

コンパクトシティはどうつくる?
暮らしてみたいまちづくり [NSRI選書]

■竹村 登
■B6判変型 174頁+カラー口絵8頁 定価 本体1200円+税
■2020年10月19日刊行

持続可能な都市づくりの概念「コンパクトシティ」。日本では、人口減少や超高齢社会を見据え、また、災害に強いまちづくりが目指されてきた。30年の蓄積とこれからの取組みを紹介。刊行に寄せて・饗庭伸(東京都立大学教授)


●●●担当編集者より●●●
目の前に横たわる、まるごと土色の樹。全長20mはあるだろう、まさに根こそぎだ。降り続いた雨と台風の暴風雨で濁流と化した河が、数日前に運んできて、置き去りにした。
昨年の台風19号で、また今年の集中豪雨でも、高齢者施設が洪水に飲み込まれたというニュースが流れた。ハザードマップで危険を知りながら、地価が安く広い土地を選んでいたのだった。水害を伝える別のニュースでは「居住誘導区域ということで、ここに引っ越して来たんです」という声。まちづくり計画が進んでいたのだろう。
「コンパクトシティ」が語られ始めて30年。この間、本書の著者は、防災まちづくり、地域活性化のコンサルティング業務等をコンパクトシティ計画の一環として取り組んできた。そのつど「あなたが暮らしたいまちは、あなたの手で」と市民参加を呼びかけてもきた。こうしたプロセスで生まれるコミュニティこそが、自然の驚異に向き合い共存できるまちづくりの担い手になると信じる。
多摩川の近くに暮らす私は、昨年初めて避難所体験をしたが、コロナ禍の今年ならどうか。都会の避難所が過密になるのは間違いない。そんな折、どこかのおじさんが声を上げた。「安全な場所にある空き家を避難所にしよう」と。・・・賛成です!(田辺澄江)


 

近刊情報

十二支妖異譚
神様になれなかった動物たち

■福井栄一
■B6判変型/上製 300頁 定価 本体1800円+税
■2020年11月下旬発売予定

子、丑、寅…と親しまれている十二支の動物たちも、ときに妖しく不気味な貌を見せる。その刹那を、記紀神話、説話、読本等から切り取ったアンソロジー。怖いことは、往々にして愉しい。


 

イベント



佐々木敦『批評王』刊行記念ソロトーク
2020年10月23日(金)20:00〜

『批評王:終わりなき思考のレッスン』に収録された全テクストを、版元の工作舎のオフィスより、著者の佐々木敦さんが生解説。全部終わるまで帰れない(笑) セルフ批評一本勝負です! どんな話が飛び出すか、乞うご期待!!!
詳細はこちら。 http://scool.jp/event/20201023/

 
 
 

kousakusha TOPICS

◆10月24日〜1月11日、板橋区立美術館にて「だれも知らないレオ・レオーニ展」開催。「平行植物」をモチーフにした立体作品も展示。ミュージアムショップで『平行植物』販売。日時予約制のため、ご注意ください。

◆10月16日〜12月16日、日比谷図書文化館にて特別展「荒俣宏の大大マンガラクタ館」開催。1Fのライブラリーショップ&カフェ日比谷では荒俣さんの本を集めたコーナーをつくり、工作舎の『大博物学時代』『本読みまぼろし堂目録』なども並びます。

◆料理家の高山なおみさん新刊『本と体』(アノニマ・スタジオさん刊行)に、田中泯著『僕はずっと裸だった』の書評収録。「この本を読んでいると、自分の大もとに戻ってゆくような感じになります」

◆10月12日配信のYAHOO!ニュース「12歳で意識不明の交通事故に。画家としての復活の軌跡と、母が綴った涙の記録」は、音楽運動療法で甦って画家となり、この夏に個展を開いた水上拓哉さんの記事。「音楽運動療法」を編み出した野田燎氏の著書『音楽運動療法入門』好評発売中。

◆担当編集者・李によるnote連載「桃山鈴子 イモムシ本制作記」 vol.3「桃山鈴子さんのイモムシ手帳拝見。脱皮したてのスギドクガの幼虫は… 」、vol.4「今回は離島旅レポ! 憧れのアサギマダラに会いにいくまで」公開中。

◆森須磨子さんのnote連載「しめかざり探訪記」 [2]山口:一筋ナワではいかない!? 小郡の丸いしめかざり、[3]島根県飯南町:出雲大社の大しめ縄製作 「大撚り合わせ」行事 公開中。

◆その森須磨子さんのしめかざりコレクション100点を展示する「渦巻く智恵 未来の民具 しめかざり」展が、東京・三軒茶屋キャロットタワーの生活工房にて11月28日〜12月27日に開催されます。その広報誌「季刊生活」7号に森さんのインタビュー掲載。

【編集後記】
●今年前半は新刊が少なかったのですが、このところ毎月新刊が予定されて、ほっとしています。年末年始にぴったりな11月の『十二支妖異譚』に続き、12月の新刊は『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』。『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』の著者カニーゲルによる良質な科学読み物です。
●来年早々には、工作舎編『最後に残るのは本』を予定。「土星紀」に連載していた「標本箱」=本のエッセイ集で、初期デザインを手がけた祖父江慎さんと米澤編集長との対談も収録。さらに、松岡正剛さんの『うたかたの国』、note連載が好評な桃山鈴子さんの作品集『わたしはイモムシ』などが待っています。どうぞお楽しみに。 (岩下)