■福井栄一
■B6判変型/丸フランス装 300頁 定価 本体1800円+税
■2020年11月25日刊行
子、丑、寅…と親しまれている十二支の動物たちも、ときに妖しく不気味な貌を見せる。その刹那を、記紀神話、説話など古典から切り取ったアンソロジー。怖いことは、往々にして愉しい。
●●●担当編集者より●●●
この春、大阪在住の福井栄一さんから、突然の連絡をいただいた。メールで本書の完成原稿も送られてきた。それまで(実はいまもなお)、福井さんとは一度もお会いしたことがなかったのだが、工作舎で本にすることを即決した。中世の説話集や近世の随筆集には、奇天烈で不可思議な物語が膨大に収録されている。しかし、それらの魅力と味わいを、そのままに現代の日本語に置き換えるには、かなりの腕力とセンスが要求される。そのあたりについては、本書に収録された「妖異譚」のどれかをつまみ食いするだけでも、充分に了解できるはずだ。編集者としては、原稿にほとんど手を入れることはなかった。数点の図版を楽しみながら探しただけである。すでに福井さんからは、次回作の提案をいただいている。いずれにしても、一度、京都あたりでお会いしなくては、と考えているところである。福井さんは甘党とのこと。こちらも同様なので、イノダのミルクたっぷりのコーヒーでも飲みながら、妖怪の話にうつつを抜かしてみたいものである。(米澤敬)