■長谷川 章
■A5判/上製 616頁(カラー8頁含) 定価 本体4800円+税
■2021年3月26日発売
ハワードにはじまる田園都市構想は、千年王国思想におけるユートピアを源流とする。心霊主義、ピューリタニズム、ドイツ神秘主義等の精神世界の視座から、英米独の田園都市を考察し、西欧モダニズムの概念を再検証した意欲作。
●●●担当編集者より●●●
西洋文明の背景として、新教と旧教という二つの「キリスト教」を措定しておくと、哲学・科学から食文化まで、なんとなく割り切れるような気がするが、もちろんコトはそんなに単純ではない。本書は「田園都市」をモチーフにしながら、そんな一筋縄ではいかない欧米の神秘思想史の入門書でもある。キルヒャーもベーメもブレイクもオッカムも、そしてソローもメスマーも登場する。そもそも田園都市は、多くの日本人がイメージするような郊外型のベッドタウンなどではなかった。それは千年王国実現のための一つの試みであり、四分五裂したプロテスタンティズムの心性が色濃く投影しているのである。個人的には、特にアメリカという国の見方が一変した。偏見ではあることは重々承知の上で、平板で能天気な国だというイメージを持っていたアメリカが、かなり不気味な陰影を帯びていることを思い知らされた。うがった見方をするなら、あの国がトランプを産み落としたことにも合点がいった。そしてGAFAの揺籃だったヒッピーたちのコミューン・ムーヴメントも、ディズニーランドもまた、千年王国=田園都市の末裔だったのである。(米澤 敬)