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2022年4月8日号
 
 

3月の新刊 1

公園が主役のまちづくり
パブリックスペースのつくり方・活かし方

■小川貴裕[NSRI(日建設計総合研究所)]
■A5判 152頁オールカラー 定価 本体2000円+税
■2022年3月22日刊行

日常生活の新しいスタイルが模索される現在、公共空間=「パブリックスペース」の重要性が再認識されている。都市公園を中心とした、活気のある住み心地の良いまちづくりの取り組みについて、大阪・千里南公園や東京・池袋イケ・サンパークなどの実例を豊富に交えながらわかりやすく解説する。


●●●担当編集者より●●●
 周辺住民の誰もが望む公共施設をつくるなど、当事者でなくとも、どれほど大変なことかと想像します。本書の著者は、まさにそうした官民の間で公共空間イノベーションに取り組む都市プランナーです。
 話は少し飛びますが、あるとき著者の小川さんがマラソンランナーでもあることを知りました。聞けば、35歳で42.195㎞を完走して以来15年、毎年フルマラソンに挑んできたそうです。そんなベテラン市民ランナーにとっての公園とは、「渡り鳥たちの止まり木(樹)のよう」なのだとか。止まり木となりうる公園は、日本全国に11万箇所。シャワー設備があれば、朝のジョギングの汗を流して着替えて出社することもできます。おしゃれなカフェがあれば、走ることでリセットした心身に、しばしの休息を与えることもできるでしょう。しかし著者が一番に望むのは、幅広い年齢層の人々の楽しそうな声が交差する「にぎわいのある公園」です。
 ここ数年のパンデミックにより、私たちのライフスタイルは変わりつつあります。新たな人とのつながりを見いだし、まちぐるみで暮らしを刷新することもできます。本書の官民連携による公共空間づくりのアプローチが、次への一歩を後押しするかもしれません。(田辺澄江)

 
 

3月の新刊 2

モナドから現存在へ
酒井潔教授退職記念献呈論集

■陶久明日香・長綱啓典・渡辺和典=編
■A5判上製 456頁 定価 本体4000円+税
■2022年3月28日刊行

日本ライプニッツ協会の会長を務め、世界のライプニッツ研究を牽引した酒井潔教授のもとで、徹底した原典読解に基づく教えを受けた23名の学者・研究者たちによる退職記念献呈論文集。最終講義『ハイデッガーによるライプニッツ「二十四の命題」読解』完全収録。


●●●担当編集者より●●●
 酒井潔先生との出会いは、第I期『ライプニッツ著作集』第8巻所収の「アルノーとの往復書簡」の訳者・竹田篤司先生のご推奨により、同書簡の訳注/解説を執筆いただいて以来のこと。その折、酒井先生の参加を知った佐々木能章先生は、ご自身が担当される予定だった同巻所収「二四の命題」の翻訳/訳注/解説をハイデッガーに精通した適任者として酒井先生に譲られたのでした。
 ライプニッツを媒介にした酒井先生と佐々木先生の信頼関係は、2009年に日本ライプニッツ協会を創立して国内外の研究者同士の交流を促進し、さらには第II期『ライプニッツ著作集』全3巻の共同監修者として、ライプニッツの翻訳出版としては異例の速さで上梓する原動力となりました。
 昨年3月に学習院大学教授を退任された酒井潔先生は、厳しい原典読解の姿勢を貫いて、多彩な後進の学徒を鼓舞され、次世代を切り拓く研究者・教育者として国内外に送り出されました。
 本書はライプニッツとハイデッガーを両極として、真摯な思索を続けた師に触発された23名の執筆者による哲学の実践です。 コロナ禍で一年延期された酒井先生の「二十四の命題」を巡る最終講義も併せて収載しています。(十川治江)

 
 

近刊情報

蟲虫双紙
ちいさなイノチのファンタジア

■福井栄一
■B6変型/丸フランス装 218頁 定価 本体1700円+税
■2022年4月下旬発売予定

「古事記」「日本書紀」「古今著聞集」「日本霊異記」などの古来の物語集から江戸・明治時代の随筆文まで、日本に伝わる「虫」にまつわる奇譚の数々を収集・精選。あやしく、不可思議でありながらも、どこか愉快な虫たちの逸話の群れは、現代の私たちの常識を易々とすり抜け、飛び越える。

●●●著者・福井栄一より読者の皆様へひとこと●●●
「日本の古典文学の深い森へ分け入って耽美な網を振り回し、小さくてズルくて愛らしくて妖しくて麗しい「蟲」たちの奇譚をたくさん採集してきました。 現代人がムシ出来ない古語の壁を取っ払い、どの咄も現代語訳してありますのでご安心下さい。蟲好きの方も苦手な方も、好奇心の蟲抑えに是非!」

 

お知らせ



『デカルトの生涯』紹介情報

週刊読書人4/1号にて、『デカルトの生涯』訳者の山田弘明・香川知晶両先生による対談が2面にわたって大きく掲載されています。ぜひご覧ください。週刊読書人ホームページでは編集部の方から、

「本紙1面にカラーで書影を掲載していますが、まずは実物を御覧いただくと造本に携わった人たちのこだわりが伝わってくると思います。そして本紙をお読みいただくと翻訳、校訂に関わった山田弘明さん、香川知晶さんらすべての人たちの血のにじむような努力、そして17世紀に活躍した著者バイエのデカルトへの思い、といったこの本に関わったすべての人たちの並々ならぬ情熱が伝わってきます。」

「本対談はデカルトの人生がダイジェスト的に論じられています。その人生の面白さを知ればデカルトに対する見方が変わるかもしれません。ぜひお楽しみください。」…という大変嬉しいコメントをいただきました。ありがとうございます!

●4月2日(土)の東京新聞読書面「情報クリップ」の欄で紹介されました。



田中泯『僕はずっと裸だった』増刷出来!

●犬童一心監督によるドキュメンタリー映画『名付けようのない踊り』の公開とともに好調な売れ行きを見せていた、初の著書にして唯一のエッセイ集。一時在庫僅少になってしまっていましたが、このたび増刷が出来ました。

●著者は現在、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に藤原秀衡役で出演中。凄まじい存在感を放っています。また、NHKで4月4日(月)、4月11日(月)の二週にわたり「SWITCH インタビュー 達人達 田中泯×橋本愛」(午後10:50~)が放送されます。再放送は4月13日(水)と4月20日(水)いずれも午前0:25~、見逃し配信はこちら

●写真集『田中泯 海やまのあひだ』も好評発売中です。

 



「謝恩価格本フェア」に参加します。

●第37回 出版社共同企画「謝恩価格本フェア」が開催されます。期間は4月15日(金)正午~6月15日(水)正午まで。

●書店の棚にない本や稀少本を、販売サイト限定で本体価格の45%引きで販売します。

●工作舎は50周年の読者サービスとして久々の参加。『本朝巨木伝』『古書の森 逍遥』など30点を選書。この機会にぜひご購入ください。

●詳しくはバーゲンブックのホームページをご覧ください。

 

kousakusha TOPICS

『進化理論の構造 I・II』、当初の予想に反して「II巻」の[現代篇]の方が先に在庫僅少になっていたのでしたが、増刷が4月下旬出来予定です。II巻には、索引・参考文献に加えて、訳者の渡辺政隆先生による「あとがき」が収録されています。訳者あとがき「流れのほとりに植えられた木」は現在、工作舎HPにて全文公開中です。

『公園が主役のまちづくり』が、さまざまなジャンルにおける最先端情報を取り上げる次世代型空間デザインメディアTECTURE MAGにて紹介されました。また、公民連携のためのNPO法人日本PFI・PPP協会のホームページ上でも同書をご紹介いただいています。

『テルミンとわたし』、レコード・コレクターズ 2022年4月号にて書評が掲載されました。評者は音楽家の西村直晃氏「…工学と音楽の交点から生まれたこの年若な楽器は、なるほど今もって未知の可能性を秘めているようにも思える」

『デカルトの生涯』を月曜社ウラゲツ☆ブログさんの「ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)」にて詳しくご紹介いただきました。「…圧倒的な労作が、工作舎さんらしい美麗な造本設計で、A5判2段組函入2巻本がたったの本体価格12,000円という、思わず手が震える安さ。売切必至と思われますので、後悔しない内に入手されることをお薦めします。」…ありがとうございます!

『生命とストレス』が、文春新書3月新刊『コロナ後の未来』 の「第2章 mRNAワクチンが切り拓く可能性 カタリン・カリコ」内で言及されています。カリコ氏の研究人生の原点となった一冊なのだとか。

◆note連載「森須磨子 しめかざり探訪記」更新されました。最新は「しめかざり探訪記[10]岐阜県高山市 しめかざりタイムスリップin飛騨」

【編集後記】
海の向こうでもこちらでもいろいろなことが起こっていますが、努めて明るい話題を選んで。

●先日授賞式のあった第64回グラミー賞で、主要4部門を含む2部門にノミネートされたジャパニーズ・ブレックファスト。受賞こそ逃しましたけれども、軽やかさ、爽やかさを感じさせる3rdアルバム『Jubilee』は傑作です。ヴォーカルの存在感が際立っていて、例えばビョークが好きな人はきっと気にいるのではと思います。明るい気持ちになりたいときなど、是非一度聴いてみてください。中心人物のミシェル・ザウナーがグラミー受賞式で着た、水仙の花をモチーフにしたヴァレンチノのドレスもインパクトがあり創造性にあふれていました。

●ウィル・スミスが前代未聞のハプニングを起こした第94回アカデミー賞、あの騒動の直後に発表されたのが長編ドキュメンタリー賞でした。受賞作は『サマー・オブ・ソウル』…ウッドストックと同じ1969年の夏に開催されていたもう一つの歴史的フェスティバル 、“ハーレム・カルチュラル・フェスティバル”の様子を収めた映像。撮影後なんと50年以上にわたって地下室に埋もれていたというその映像素材を、米ヒップホップ界の重要人物ザ・ルーツのクエストラブ(代表作:『Things Fall Apart』『Game Theory』『Undun』など)が監督・編集した作品です。
 スティーヴィー・ワンダーをはじめ、B.B.キング、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンやニーナ・シモンなどの伝説的なアーティストによる、革命的なステージ。「この映画はハーレムで過小評価されて傷ついた人たちのもの。それは1969年の過去の話ではなく、2022年の今でも(差別は)続いている‥‥」という、クエストラブの受賞スピーチは静かな口調の中に真摯な熱い思いの溢れる素晴らしいものでした。この映画の中で見られるのは本当に貴重な映像ばかりです。ネット配信もすでにされていますし、凱旋上映も決定したそうです。よかったらぜひ観てみてください。かっこいい音楽にたっぷりと浸れます。

●日本時間の4月8日、アメリカでメジャーリーグベースボールの新しいシーズンが始まりました。大谷翔平選手は今年、どんな活躍を見せるのでしょうか。日本人選手に関して、注目してほしいのが今シーズン、自身初めての開幕ロースター入りを果たした加藤豪将選手。トロントブルージェイズ所属の27歳の内野手です。日本のプロ野球でのプレー経験はなく、カリフォルニアで生まれ2013年にニューヨークヤンキースからドラフト2巡目で指名された後、約10年かけて最高峰の舞台にたどり着きました。ブルージェイズは強豪なので、そう多く出番はないかもしれないですが、良いチャンスに恵まれるようにと願っています。
(山田)