Facebook icon Twitter icon Forward icon
2022年5月9日号
 
 

4月の新刊

蟲虫双紙
ちいさなイノチのファンタジア

■福井栄一
■B6変型/丸フランス装 218頁 定価 本体1700円+税
■2022年4月21日発売

「古事記」「日本書紀」「古今著聞集」「日本霊異記」などの古来の物語集から江戸・明治時代の随筆文まで、日本に伝わる「虫」にまつわる奇譚の数々を収集・精選。あやしく、不可思議でありながらも、どこか愉快な虫たちの逸話の群れは、現代の私たちの常識を易々とすり抜け、飛び越える。


●●●担当編集者より●●●
福井栄一氏の「十二支」「身体」に続く、シリーズ第3弾。とは言っても、シリーズとしてスタートしたわけではないので、シリーズ・タイトルのようなものは、今のところ特にありません。で、今回のテーマは虫(蟲)です。目次をご覧いただければ一目瞭然のように、本書で活躍する虫の仲間には、昆虫ばかりではなく、蛙や蜥蜴、蛭や蝸牛など、多彩な生きものが含まれます。漢字名に虫偏がくっついている連中も少なくありません。裸虫という言葉もあるように、ニンゲンだって虫扱いされることもあるようです。奇談、怪談、変梃なショートショートのオンパレードであることは、今回も相変わらずですが、意外なことに、特に昆虫に限ってみると、妖怪変化の類は少ないようです。ま、昆虫そのものがもともと妖怪じみているのだから、あえて変化(へんげ)にしなくても、そのままで充分に、怖くて不可思議なのでしょう。江戸時代の百物語本の挿絵にもあまり迫力のあるものはなく、どちらかというと可愛らしいものが多い印象です。
 実はすでに「シリーズ」の次回作も形になりつつあります。テーマは「水族」。今年も暑い夏になりそうだとか。暑気払いには、こちらも是非。福井ワールド、まだまだ続きます。(米澤敬)

 
 

近刊情報

ヴァンパイアと屍体 新装版
死と埋葬のフォークロア

■ポール・バーバー
■野村美紀子=訳
■四六判/上製 456頁 定価 本体3200円+税
■2022年5月下旬刊行予定

映画・小説・アニメなど様々なフィクションでおなじみの吸血鬼ドラキュラ。スラヴ地方を中心に広く伝わる《吸血鬼(ヴァンピール)伝説》を、現代法医学の観点から詳細に分析し、吸血鬼の意外な実像を解き明かす画期的書。待望の新装復刊。

●今年に入って、グレイディ・ヘンドリクス『吸血鬼ハンターたちの読書会』(原島文世訳、早川書房)、恩田 陸『愚かな薔薇』(徳間書店)、シルヴィア・モレノ=ガルシア『メキシカン・ゴシック』(青木純子訳、早川書房)など、「吸血鬼もの」の刊行が相次いでいます。5月末には、ドラキュラ伯爵以前の吸血鬼小説のアンソロジー、G・G・バイロン/J・W・ポリドリ 他『吸血鬼ラスヴァン──英米古典吸血鬼小説傑作集』(夏来健次/平戸懐古 編訳、東京創元社)が刊行されるとか。『ヴァンパイアと屍体』を読むと、例えば疫病の流行や戦争の長期化など、今の世相を特徴付けるそれらの要素と、こうした「吸血鬼もの」の隆盛とは、決して無関係ではないことに気づかされると思います。ぜひこれらの小説とともにお楽しみください。

 

お知らせ

ブックファースト新宿店「蔵出し本フェア」開始

●ブックファースト新宿店にて、今回で第11回目となる「蔵出し本フェア」 に参加しています。出版社にわずかに残る書籍「在庫僅少本」を「蔵出し本」と銘打ち展開する毎回大好評の企画です。ここに出ている書籍には、この場を逃せばもう二度と出会えないかもしれません。この機会にぜひお立ち寄りください。

●工作舎からは『ブックマップ』『夢の消費革命』など僅少本30点強をお出ししています。目印は「赤い帯」です。

●期間 4月29日(金・祝)〜6月10日(金)
場所 ブックファースト新宿店 Aゾーン:アドバンスドステージ

 



『進化理論の構造 II』増刷出来

●4月18日、『進化理論の構造 II』の増刷が出来ました。

●II巻は、創造説との闘い、ドーキンスとの角逐、自身の断続平衡説をめぐる論争などを収めた[現代篇]。巻末には、索引や、詳細な参考文献リスト、訳者あとがきが収録されています。

●先月号でもご案内しましたが、現在、訳者・渡辺政隆さんのあとがきを工作舎HPにて全文公開中です。重厚長大な本書の読解に挑む、一つのきっかけや後押しとなればと思い、再度お知らせをいたします。ぜひご一読ください。

kousakusha TOPICS

『平行植物』を、youtubeへんないきものチャンネルでご紹介頂きました。大きな反響が出ています。ぜひ一度ご覧ください。〜【平行植物】現代科学で解明できない奇妙な植物たち

『テルミンとわたし』、著者の竹内正実さんのインタビュー記事が、5月1日の北海道新聞「読書ナビ」欄に掲載されました。テルミンについて、「手を一ミリ動かせば、一ミリ分音の高さが変わる。こんなに敏感で正直なものはほかにない」「完全に片手だけで弾ける楽器は少ない。非接触には救いや可能性がある。脳血管障害で半身まひになっている方々の希望につながれば」と、語っています。

『公園が主役のまちづくり』が、4月27日の建設通信新聞にて紹介されました。

◆第37回 出版社共同企画「謝恩価格本フェア」が開催中です。日本映画界が誇る巨匠・今村昌平監督の『撮る』、美味しいグルメスケッチ『ワンダーレシピ』、ブッカー賞作家バンヴィルの『ケプラーの憂鬱』など30点を販売サイト限定で本体価格の45%引きで販売しています。出品リストはこちらをご覧ください。6月15日(水)正午まで。

『空間に恋して』の象設計集団や、『漁師はなぜ、海を向いて住むのか?』の著者地井昭夫氏の師である吉阪隆正の展覧会『吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる』が東京都現代美術館で開催中!会期:3月19日(土)〜6月19日(日)、開館時間は10:00〜18:00です。「建築家・教育者・登山家・冒険家・文明批評家といった多彩な顔を持つ吉阪隆正の「人」に迫る」7章構成の展示を通して、吉阪の仕事の現代における再評価を試みています。詳しくは現代美術館公式サイトへ。

◆note連載「桃山鈴子 イモムシ本制作記」、5月4日に更新。最新は、「イモムシ、へんしん! 桃山鈴子さんの初めての絵本と原画展」

【編集後記】
GWいかがお過ごしでしたでしょうか。休みであるなしに関わらず、今の季節は気温もほどよく、風も心地よく、どこかへ出かけるにもただただ家でのんびりするにもちょうどいい。そんなちょうどいい季節をさらにちょうどよくするような、いい感じの音楽と本をオススメしたいと思います。
【音楽】
●BS2000『Simply Mortified』:80年代から00年代初期にかけて活躍した白人ヒップホップグループBeastie Boysのメンバー、アドロックことアダム・ホロヴィッツによるサイドプロジェクト。オルガンとドラムを基調として、古いゲーム音楽を思わせる、チープながらもアイデアが豊富でノリの良い、とてもヘンテコな楽曲がほとんど一発録りのような勢いで収められた一作。ちょっとした街歩きの時などにぜひ聴いてみてください。
●Wet Leg 『Wet Leg』:2021年にデビューシングル『Chaise Longue』と2ndシングル『Wet Dream』の大ヒットによって一躍注目を集めるに至った英国ワイト島出身のロックバンドのデビューアルバム。まずは上記の2曲をとにかく聴いてみてください。クールかつキュートで楽しくて、全体的にどこか懐かしくて。家にひとりでいる時だったら、きっとあなたは聴きながら変なダンスを踊りたくなること請け合いです。本人たちもインタビューで答えていたのですが、このアルバムは例えばドライブをする時とかに聴いてみるのがいいかもしれません。

【本】
●『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する』(友田とん 代わりに読む人)
まず、なんだ、そのタイトルは?と引っ掛かりを持ったあなたにこそ、この一冊をオススメしたいと思います。突然降ってわいたような「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する」というアイデアに導かれるようにして、東京の各所を歩き回る。パリのガイドは私をどこへ導くのか。世界の見方が、一変するというより、ひそやかな可笑しさを帯びたものになる、というようなそんな一冊です。
●『パラレル百景』(短歌:笹 公人  絵:北村みなみ トゥー・ヴァージンズ)
歌人の笹 公人さんの短歌にイラストレーターの北村みなみさんがイラストをつける、Twitter上で連載された『パラレル百景』の書籍化。「金星の王女わが家を訪れてYMOを好んで聴けり」「入学式の光に満ちた校庭の誰も時空を逃れられない」「そうこれはだいだらぼっちが黒い海に民家をつぎつぎ投げ入れる音」といった、不思議な味わいを持つ歌に、北村さんの優しくて可愛いイラストが切なさを添え、歌の持つイマジネーションをさらに広げます。身近な世界の身近な時間にある、ふと気になってもすぐに忘れてしまうような驚きやきらめきが独創的な形ですくい取られていて、読んだらきっと誰かにオススメしたくなると思います。
【山田】