■福井栄一
■B6変型/丸フランス装 218頁 定価 本体1700円+税
■2022年4月21日発売
「古事記」「日本書紀」「古今著聞集」「日本霊異記」などの古来の物語集から江戸・明治時代の随筆文まで、日本に伝わる「虫」にまつわる奇譚の数々を収集・精選。あやしく、不可思議でありながらも、どこか愉快な虫たちの逸話の群れは、現代の私たちの常識を易々とすり抜け、飛び越える。
●●●担当編集者より●●●
福井栄一氏の「十二支」、「身体」に続く、シリーズ第3弾。とは言っても、シリーズとしてスタートしたわけではないので、シリーズ・タイトルのようなものは、今のところ特にありません。で、今回のテーマは虫(蟲)です。目次をご覧いただければ一目瞭然のように、本書で活躍する虫の仲間には、昆虫ばかりではなく、蛙や蜥蜴、蛭や蝸牛など、多彩な生きものが含まれます。漢字名に虫偏がくっついている連中も少なくありません。裸虫という言葉もあるように、ニンゲンだって虫扱いされることもあるようです。奇談、怪談、変梃なショートショートのオンパレードであることは、今回も相変わらずですが、意外なことに、特に昆虫に限ってみると、妖怪変化の類は少ないようです。ま、昆虫そのものがもともと妖怪じみているのだから、あえて変化(へんげ)にしなくても、そのままで充分に、怖くて不可思議なのでしょう。江戸時代の百物語本の挿絵にもあまり迫力のあるものはなく、どちらかというと可愛らしいものが多い印象です。
実はすでに「シリーズ」の次回作も形になりつつあります。テーマは「水族」。今年も暑い夏になりそうだとか。暑気払いには、こちらも是非。福井ワールド、まだまだ続きます。(米澤敬)