■長谷川 章
■A5判上製 304頁 定価 本体3600円+税
■2022年8月24日刊行
桂離宮の美しさを世界に伝えた建築家ブルーノ・タウト。毛筆で一気に描き上げた二十六葉の『画帖桂離宮』を、ドイツ思想に造詣の深い著者が原文を丹念に読み解き、タウトが見出した 「関係性の美学」に迫る。
●●●担当編集者より●●●
京都にはよく出かける。コロナが流行してからも、年に4、5回は「上京」している。たいていは仕事なので、神社仏閣庭園史跡などに立ち寄る機会はあまりない。桂離宮も未見である。というか、桂が京都のどの辺りに位置するのかについても、最近まで意識したことがなかった。ブルーノ・タウトに対しても似たようなものだ。むしろ坂口安吾のタウト批判を、安吾に肩入れして読んだクチである。それでいて、桂もタウトもずっと気になる存在ではあった。長谷川章さんのこの本を編集できて、ようやく桂とタウトに少しは正面から向き合えたように思う。タウト本人の案内で、その思索を追想しつつ、桂の庭をそぞろ歩くうちに、桂離宮の「結構」が体に入ってきた。またドイツ・ロマン主義が対置されることで、日本文化へのタウトの眼差しを鮮明に感じられた。もしかすると、桂離宮がイマジネーションに彩られたどこにもない「架空の庭園」になってしまったかもしれない。それはそれで魅力的なのだが、だからこそ尚更、いま実際に桂を訪れるべきかどうか、迷っている。(米澤敬)