■遠藤 徹
■四六判上製 356頁 定価 本体2500円+税
■2022年10月24日発売
19世紀のハイチに「生ける死者」として現れ、ホラー映画の主役となったゾンビ。資本主義や社会問題と結びついたゾンビ表象を、現代思想の手法で読み解く。
●●●担当編集者より●●●
「犬人怪物」「ヴァンパイア」「狼女」と、時を隔てて細々と刊行を続けてきた工作舎の「西洋化身シリーズ」(筆者による勝手な命名です)に、「ゾンビ」がついに仲間入りを果たした。先輩たちに負けず劣らず、なかなか一筋縄ではいかない新人だ。表象としては「悪を映し出す鏡」にもなれば、従属と抵抗が無限ループ化する「合わせ鏡」にもなったりする。常に揺れ動き、ひとつのところにとどまることはない。本書をいち早くお読みくださった、詩人で『機関精神史』発行人のお一人、高山えい子さんは「ゾンビはマニエリストだ」と看破された。
現在、ゾンビをテーマにした書籍は膨大な数に上り、一大ジャンルが形成されている。本書のテーマと重なる評論本もいくつかある。そうしたなかで本書ならではの魅力のひとつを挙げるとすれば、読者をぐいぐいと引き込む独特のグルーヴをもった書きぶりだ。著者の遠藤徹さんは「日本ホラー小説大賞」を受賞した小説家でもある。読者にさまざまな情動を喚起させるレトリックはお手の物といえよう。ぜひご体感いただきたい。(石原剛一郎)