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2022年12月8日号
 
 

11月の新刊 1

本が湧きだす
杉浦康平デザインの言葉

■杉浦康平
■A5判変型 320頁(カラー48頁含) 定価 本体3200円+税
■2022年11月14日発売

「一」冊の本を開けば左右の「二」。パラパラとめくれば「多」。閉じれば即座に「一」に戻る。「一即二即多即一」となる本の形態の絶妙。ブックデザインをテーマに、戦後の日本グラフィックデザインを牽引した杉浦康平の言葉を集成。松岡正剛、鈴木一誌・戸田ツトム等の対話も収録。

●●●担当編集者より●●●
「本」という物体は、興味深い特質を秘めています。一冊の本を手にとれば、ごく自然にページが開く。「多」なるページが「一つの背」で綴じられているからです。
多であるのは、ページだけではありません。「本」は多なる「文字」、多なる「記号」、多なる「図像」の集合体でもあります。本を手にして、人はしばし幸福感に満たされます。
ときに「空間」や「時間」が多重に畳みこまれ、「本」という一なる宇宙を形づくる。これは、「本」というメディアが包みこむ極めて重要な特性、「複合体」としての特性です。
タイトルは「『本が湧きだす』がいい」という杉浦先生の一言は、「多」なるページがまだその位置を完全には定着していない頃のことでしたが、これを機に制作が加速しました。
複合体としての本の魅力を、今までになかった視点で捉えようとする試みに満ちた『本が湧きだす』。ぜひ手にとって数々のことばをヒントに、新たなブックデザインの道を拓かれんことを。
以上、このたびの「編集者より」の一文は、杉浦先生からのアドバイスをいただきながらのまとめとなりました。(田辺澄江)                

*下の「TOPICS」に紀伊國屋書店新宿本店限定の購入特典のお知らせがあります。

 
 

11月の新刊 2

十二支外伝
スーパー アニマル ミステリー ツアー

■福井栄一
■B6判変型/丸フランス装 定価 本体2400円+税
■2022年11月22日発売

十二支ばかりがなぜ偉い。猫や狐に鯨、はたまた獅子や人魚まで、十二支になれなかった動物たちの怪異譚を収集。波乱万丈、奇妙奇天烈、夢の舞台の幕が開く。

●●●担当編集者より●●●
福井栄一さんの古典語りシリーズも、早くも5作目である。今回は、十二支の選考に漏れたけものたちが主人公だ。実は、この秋まで福井さんご本人とは直接の面識がなかった。関西ではマスコミへの登場も少なくないため、その人となりについては、関西出身の工作舎デザイナーからは多少は聞いていた。10月のある日、福井さんも当方も下戸だということで、京都市役所近くの喫茶店で待ち合わせた。特に目印はなかったが、一目でその人とわかった。外見も人柄も予想通りだった。ただ背丈が予想よりも高く、並んで歩いていると、つい荒俣宏さんを連想してしまった。
福井さんは、大学を出てからは、半沢直樹のドラマが牧歌的に思えるほどの苛烈な職場で働き、地唄舞と出会ったことをきっかけに退職して、上方芸能の世界にのめり込んでいったという。本人もその語り口も、上方芸能そのままの人である。そして何より筆が早い。校正ゲラも超高速で戻ってくる。というわけで、すでに第6弾、第7弾の準備に入っている。まずは植物編、その後に鳥類編が続く。来年前半には、おめみえがかなうと思う。(米澤 敬)

 
 

近刊情報

反復幻想
進化と発生とゲノムの階層性

■倉谷 滋
■A5判/上製 704頁 定価 本体8000円+税
■2022年12月14日発売予定

ヘッケルによって提唱された「発生反復説」は、1990年代に興隆した進化発生学に重要な視点と課題を与えた。「発生反復説」の現代的可能性を追求する。

*本書刊行を記念して、「進化発生学者 倉谷滋が『ヘッケルと進化の夢』(佐藤恵子著)を読みつつ、毀誉褒貶の人ヘッケルに思いをはせる」をnoteで公開しました。ぜひお読みください。

 

お知らせ

『科学史から消された女性たち 改訂新版』増刷決定!

◆9月に刊行したばかりの、ロンダ・シービンガー 『科学史から消された女性たち 改訂新版——アカデミー下の知と創造性』 の増刷が決定しました。

◆刊行にあわせて、ロンダ・シービンガーを基調講演に迎えたシンポジウム(お茶の水女子大学と東海ジェンダー研究所)が相次いで開催され、大きな反響を呼んでいました。そこに、10月29日の毎日新聞で内田麻理香さんに書評していただき、注文が加速!

◆ついに品切れになってしまいましたが、第2刷は12月14日にできる予定。もうじきです!

 

フェア

書泉グランデ「工作舎 在庫僅少本フェア」

◆神保町の書泉グランデ4Fにて、「工作舎在庫僅少本フェア」が開催中。魔術、オカルト、その他人文書の、入手が難しい貴重な書籍が揃います。

◆写真はフェア開始時10月14日時点。現在はだいぶ売り切れてしまいましたが、レオノール・フィニ『夢先案内猫』『マジカル・ヒーラー』などを追加しました。開催は12月31日まで。ぜひお出かけください。

 

kousakusha TOPICS

◆杉浦康平『本が湧きだす』には、2010年に紀伊国屋書店「じんぶんや」フェア用に書き下ろした「一枚の紙、宇宙を呑む」が収録されています。そこで、当時の小冊子を再現して紀伊國屋書店新宿本店限定の『本が湧きだす』購入特典としました。3F人文書で展開中。どうぞお早めに。

◆11月26日付 図書新聞 山本貴光さんと礒崎純一さんの対談「全集、その独特の悦びと愉しみ——国書刊行会創業50周年に寄せて」にて、これはよくできていると思った全集として、山本さんが工作舎版『ライプニッツ著作集』をあげてくださいました。

◆11月19日 読売新聞夕刊「よみうり寸評」にて、メーテルリンクの『花の知恵』に言及。「…メーテルリンクはランの「天才」を称えた。虫を呼んで受粉させる機能に優れており、「蜜蜂や蝶を自分の思いどおりに働かせる術にもっとも長けている」と。…」

◆note連載「わたしの仕事と工作舎の本」。第4回は、科学史研究者 鶴田想人さんが読む『植物と帝国』。ロンダ・シービンガーによる、中絶をめぐる無知の歴史に光を当てた書物です。

【編集後記】
●復刊した『科学史を消された女性たち』が「改訂新版」たるゆえんは、翻訳者の小川眞里子先生の丁寧な校正にありますが、図版の差し替えにもよります。美術館や図書館のアーカイブがweb上で公開されてきた恩恵で、精緻な版画が容易に入手できるようになったとのこと。物理学者のエミリ・デュ・シャトレも繊細な版になり、昆虫学者マリア・シビラ・メリアンにいたっては、旧版(原著も!)では違う人の肖像画を載せていたことも発覚し、修正できました。
●ロングセラーとして愛読されている『キルヒャーの世界図鑑』も美しい図版に差し替えて、新版にする準備が進んでいます。
●今号が今年最後の配信になります。例年より多くの新刊が刊行でき、増刷に追われた年でした。年末の営業は12月28日まで。年始は1月6日から営業します。少し早いですが、よいお年をお迎えください。(岩下)