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2023年1月10日号
 
 

12月の新刊

反復幻想
進化と発生とゲノムの階層性

■倉谷 滋
■A5判/上装 704頁 定価 本体8000円+税
■2022年12月14日発売

ヘッケルによって提唱された「発生反復説」は、1990年代に興隆した進化発生学に重要な視点と課題を与えた。「発生反復説」の現代的可能性を追求する。

●●●担当編集者より●●●
倉谷さんとの本づくりは、翻訳書を含めるとこれで5冊目になる。いつも驚かされるのは、専門の進化発生学はもちろん、古典に至るまで多くの領域の論文や書籍をよく読み込まれていること。加えて、かなりの偏りはあるものの小説や映画への目配りも半端ではない。そんな倉谷さんが綴った『反復幻想』は、内容、ヴォリュームともに、そうそうたやすく読みこなせるような代物ではないのだが、各章に挿入されたコラムが、マラソンの給水ポイントのように、次のページを開く駆動力を与えてくれる。
これまでエルンスト・ヘッケルというと、『自然の技巧』に代表されるヴィジュアル・メーカーや、どこか怪しげな進化論原理主義者のイメージが先行しており、一部のヘッケル人気もそのあたりが主な理由になっていた。一方で、もう終わった科学者とされることも多い。近年、倉谷さんほど正面切ってヘッケルの発想に向き合い、その現代的意義まで掬い取ろうとした人はいなかったのではないだろうか。ちょっと気になるのは、ヘッケルが真っ当に評価されるほどに、当の倉谷さんが怪しく見えてくることである。『分節幻想』『反復幻想』と続いた幻想シリーズ、次はどんな幻想に迷い込むのだろうか。  (米澤 敬)

 
 

近刊情報

生きねばや
評伝 村越化石

■荒波 力
■四六判上製 360頁 定価 本体2900円+税
■2023年1月24日発売予定

「魂の俳人」と呼ばれた村越化石。15歳でハンセン病に罹患しながらも、俳句に精進し、ついには紫綬褒章を受章するまでに。高僧のように澄み切った境地に至り、優れた作品を残した彼の生涯をたどる。

*村越化石の出身地、静岡県藤枝市郷土博物館・文学館にて、生誕100年記念の企画展「魂の俳人 村越化石」開催中(1月5日〜29日)

 

お知らせ

『平行植物 新装版』SNS大反響!

◆ レオ・レオーニ『平行植物』の動きが昨秋から加速し、増刷することに。新装版6刷ができます、とSNSで告知をしたら、大反響! 過去最多の「いいね」をいただきました。
twitterはこちら

◆年明けに品切れになってしまいましたが、6刷はもうじき1月20日頃にできる予定。

 

kousakusha TOPICS

◆杉浦康平『本が湧きだす』、「ブレーン」2023年2月号、「アイデア」2023年1月特大号にて新刊紹介。特に「アイデア」では特集にて武蔵野美術大学 美術館・図書館ウェブサイト「杉浦康平デザインアーカイブ:デザイン・コスモス」が大きく取り上げられました。

◆12月17日 毎日新聞「2022年この3冊」に内田麻理香さんが『科学史から消された女性たち 改訂新版』を選書。「…科学が価値中立だという神話を解体した書」と。
また、東京大学 科学史・科学哲学研究室卒業生の会報誌「科哲」に、訳者の小川眞里子先生による『科学史から消された女性たち』30年後の改訂新版エピソードが掲載されました。全文のpdfも許可を得て掲載しています。こちらへ

◆週刊読書人12月16日号にて、藤林道夫氏(フランス文学)が長谷川章『桂離宮のブルーノ・タウト』を書評。 「桂離宮の美と照応するタウトの精神世界 『思惟するのは視覚である』」

◆遠藤徹『ゾンビと資本主義』の一部を、「音読ブラックスワン」にて朗読配信中。

◆立命館大学生協ブックセンター「ふらっと」にて『狼女物語』の編者・ウェルズ恵子先生関連フェア「ヴァナキュラー文化の世界」ブックフェア開催中。1月31日まで。

◆12月14日朝日新聞サンヤツ広告を久しぶりに出しました。杉浦康平『本が湧きだす』、福井栄一『十二支外伝』、シービンガー『科学史から消された女性たち 改訂新版』の3本です。広告はこちら。

◆ユリイカ2023年1月号 コペルニクス特集」表4にも広告を出しました。『科学史から消された女性たち 改訂新版』、ケプラー天文三部作(『宇宙の神秘』『宇宙の調和』『新天文学』)、小説『ケプラーの憂鬱』『ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統』、そして『ルネサンス・バロックのブックガイド』と欲張りました。こちらもSNSの反響多数。

◆ISIS編集学校(松岡正剛校長)でのコラボ企画【工作舎×多読ジム】では、メーテルリンク『ガラス蜘蛛』、桃山鈴子『わたしはイモムシ』、福井栄一『蟲虫双紙』をキーブックに9名がエントリー。栄えある「工作舎賞」の発表と、選評者である編集部の田辺澄江のインタビューを掲載いただきました。詳しくはこちら

◆note連載「「桃山鈴子 イモムシ本制作記」更新。イモムシ画家になる前の桃山鈴子さんが魂をつかまれた「黒い芋虫」

【編集後記】
●2023年初めてのメールニュースになります。本年もよろしくお願いいたします。
●昨年は思いがけずに注文が殺到する本があり、緊急増刷が相次ぎましたが、今年は早くもその気配があります。それはタイガー立石の『ムーン・トラックス』。この本は前々から海外での評判がよく、アメリカから新たな注文が舞い込んだのです。在庫が少なく増刷しないと対応できませんが、オールカラーで印刷費がかさむため会議で検討しなくては。本書には昨年末にご逝去された建築家の磯崎新氏による文章も収録されています。 (岩下)