■ジョスリン・ゴドウィン/川島昭夫=訳
■澁澤龍彦・中野美代子・荒俣宏=解説
■A5判変型上製 344頁 定価 本体3200円+税
■2023年3月22日発売
キルヒャーの膨大な業績は、澁澤龍彦らに影響を与え、U・エーコに「全著作を所有するためならば全てを投げ打つ覚悟がある」とまで言われた。キルヒャーの奇怪な図像から、奔放な想像力の世界を再生したロングセラー。1986年の邦訳初版から、40年弱の時を経て図像を全面リマスター&20ページ増補!!
●●●担当編集者より●●●
アタナシウス・キルヒャーの名をどこで知ったのかについては、全く覚えがない。いつの間にか、ヨーロッパ文化史中いちばん気になる存在になっていた。何といってもその著作の図像群が不可解、かつ不可思議だ。イエズス会士でもある当人は、おそらく大真面目だったのだろうが、どこかが突拍子もなくズレている。世界の調和をテーマにした『普遍音楽』(工作舎刊)を一読していただければ、その記述内容もかなり奇妙であることに気づくはず。ナマケモノの歌やタランチュラの踊りやハメルンの笛吹きなど、あまり本筋とは関係ないエピソードの目白押しなのである。もちろん本書の眼目となる『シナ図説』や『バベルの塔』や『地下世界』などは、図像を眺めているだけで、頭はクラクラ、心はワクワクしてくる。近代の目から見れば学問的には特に大きな業績を残しているわけではないものの、F・イエイツやR・カイヨワがキルヒャーの虜になったのも充分に納得できる。今回の改定版では、ほぼ全図像をリマスターすることができた。以前の版では見えなかった細部にまで、目が届くようになったはずだ。読者諸兄諸姉の想像力の翼が、よりいっそうダイナミックに羽ばたくことになれば、幸い至極である。(米澤 敬)