Facebook icon Twitter icon Forward icon
2023年9月29日号
 
 

9月の新刊

ソバとシジミチョウ

■宮下 直
■四六判 248頁+カラー口絵8頁 定価 本体2600円+税
■2023年9月25日発売

生態学と生物多様性を専攻する南信州出身の著者は、後にフィールドワークを展開することになる上伊那郡飯島町で、偶然ミヤマシジミが群をなして飛ぶ姿を目にして驚嘆する。近くには一面白い花を咲かせるソバ畑があった。本書は、日本の里山を舞台に人-自然-生物のあいだで繰り広げられてきた相互依存的な関係がいかにして生じ、どんな問題に見舞われてきたかを分析する。

●●●担当編集者より●●●
「シジミチョウにとって、ソバの花の小ささはちょうどよいのでしょうね」と、農業関連の研究機構に勤務する人が、書名からの印象を話してくれた。そう、翅を閉じたシジミチョウは親指の爪ほどの大きさしかない。本づくりに当たっては、著者が率いる「ミヤマシジミ里の会」の写真を自由に閲覧させてもらった。撮影は主に学生によるもので、知識と現場のリアルで成立する写真は、物事の小ささや速度を克服して、どれも見応えがある。表紙の1カットも、ここからの選出である。
本書執筆のきっかけとなったある日の目撃談を、著者から直に聞いたのは今から7年ほど前のこと、飯島町での研究計画が具体化する頃だった。その出会いのシーンを書名候補の筆頭にあたため続けた。それにしても、シジミチョウが数匹連なって陽ざしの中を舞い飛ぶ光景は、どれほどまばゆく尊いものなのだろう。完全な絶滅からの復活はない、危惧される状態での研究者の取組みが賛同の輪を広げ成果を収めつつある。(田辺澄江)

 
 

近刊情報

サレ・エ・ペペ 塩と胡椒

■四方田 犬彦
■四六判上製 380頁 定価 本体2800円+税
■2023年10月下旬発売予定

なぜ知らない料理を食べたいと思うのか。「食べる」とは生理的な行為だけではなく、歴史がつくりあげてきた体験であり、料理のなかには「見えない政治」が働いていることを浮き彫りにする痛快無比の料理論集。

 

お知らせ


2023年11月4日(土)、四方田犬彦『サレ・エ・ペペ 塩と胡椒』出版記念イベント『映画と食の政治学』開催

◆四方田犬彦さんが、シネマハウス大塚にて特別講座と出版記念サイン会を行います。講座は小津安二郎『お茶漬けの味』、李櫻(リ・イン)(『靖国』の監督)『味』、ブニュエル「自由の幻想」、パゾリーニ『デカメロン』、フェリーニ「サチュリコン」の5つの作品をあげて論じます。妻に隠れてひっそりと食べるお茶漬け、豆だけの食事、文革と料理の復興の困難さ、食事と排泄が逆転した社会などがとりあげられた、『食』についての色とりどりな内容になります。事前予約に限り、 『サレ・エ・ペペ 塩と胡椒』 を特別価格で販売いたします。お申し込み方法は こちらのページ をご参照ください。

 

『精神と物質』10月に改訂6刷出来!

◆現代物理学の泰斗シュレーディンガー著 『精神と物質』 が重版出来!人間の意識と進化について論じた、『生命とは何か』と並ぶ名著です。この機会にぜひお読みください。

 

kousakusha TOPICS

note連載 『わたしの仕事と工作舎の本』 を更新しました。第5回は、チェコの生殖技術とそれをめぐる政治や制度を、歴史社会学や科学技術社会論の視点から研究している村瀬泰菜さんに、ロンダ・シービンガー 『女性を弄ぶ博物学』 を扱った記事を寄稿していただきました。

◆NHKテキスト「すてきにハンドメイド」9月号のアトリエを訪ねる連載「手仕事が生まれる場所」で、カラー4ページにわたって、 『てづくりノート』 の小倉ゆき子さんが紹介されました。

◆月刊「MOE」10月号で、『わたしはイモムシ』の桃山鈴子さんが4ページにわたって紹介されました。絵本『へんしん』(福音館)はもちろん、ニューヨークADC賞ブロンズキューブを受賞した作品集 『わたしはイモムシ』(工作舎) からの作品も多数掲載。

◆グラフィックデザイナー鈴木一誌さんが逝去されました。杉浦事務所時代からお世話になり、 『地球外生命論争1750-1900』 『ブロッケン山の妖魔』 では、精緻な美しいデザインを施してくださった偉大なデザイナーでした。詳しくは こちら。

◆プリーモ・レーヴィ 『周期律』 が8/13の読売新聞「空想書店」にて、アメリカ文学者・翻訳家の藤井光さんに紹介されました。

【編集後記】
●10月の新刊 『サレ・エ・ぺぺ 塩と胡椒』 を、一足先に読みました。四方田犬彦さんの書籍を読むのは、初めてです。日本料理、食文化、カーニズムなどの複数のテーマを取り上げた複雑な構成が、ページを送るごとに混ざり合っていく様は圧巻です。四方田さんの著作は、 『サレ・エ・ぺぺ 塩と胡椒』 で169冊目。今年刊行の書籍としては、なんと4冊目です。職業批評家/作家の引き出しの深さと執筆の早さに、改めて感銘を受けました。(田波)