■宮下 直
■四六判 248頁+カラー口絵8頁 定価 本体2600円+税
■2023年9月25日発売
生態学と生物多様性を専攻する南信州出身の著者は、後にフィールドワークを展開することになる上伊那郡飯島町で、偶然ミヤマシジミが群をなして飛ぶ姿を目にして驚嘆する。近くには一面白い花を咲かせるソバ畑があった。本書は、日本の里山を舞台に人-自然-生物のあいだで繰り広げられてきた相互依存的な関係がいかにして生じ、どんな問題に見舞われてきたかを分析する。
●●●担当編集者より●●●
「シジミチョウにとって、ソバの花の小ささはちょうどよいのでしょうね」と、農業関連の研究機構に勤務する人が、書名からの印象を話してくれた。そう、翅を閉じたシジミチョウは親指の爪ほどの大きさしかない。本づくりに当たっては、著者が率いる「ミヤマシジミ里の会」の写真を自由に閲覧させてもらった。撮影は主に学生によるもので、知識と現場のリアルで成立する写真は、物事の小ささや速度を克服して、どれも見応えがある。表紙の1カットも、ここからの選出である。
本書執筆のきっかけとなったある日の目撃談を、著者から直に聞いたのは今から7年ほど前のこと、飯島町での研究計画が具体化する頃だった。その出会いのシーンを書名候補の筆頭にあたため続けた。それにしても、シジミチョウが数匹連なって陽ざしの中を舞い飛ぶ光景は、どれほどまばゆく尊いものなのだろう。完全な絶滅からの復活はない、危惧される状態での研究者の取組みが賛同の輪を広げ成果を収めつつある。(田辺澄江)