■佐竹幸一+森岡修一+里見 脩+杉山靖夫=編
■A5判 256頁 定価 本体2600円+税
■2024年1月23日発売
カントの『実用的見地の人間学』に感銘を受けて設立された人間学研究会は、60年間「人間とは何か」について取り組んできた。ソ連における障害者の社会参加から「たん焼 忍」誕生秘話まで、会員13名によるエッセイ・論集。
●●●担当編集者より●●●
発売日の数日前、編・著者が集合する出版記念会に同席させていただいた。
まずブックデザインが話題にあがった。カバー写真の人物は女性か男性か、職業は何か、影から察していつ頃にどこへ行こうとしているのか・・・等々、見る角度によって想像が広がるのは、いかにも本書の表紙としてふさわしいと好評をいただく。60年におよぶ人間学研究会の歩みについては本書に詳しいが、現在に至るまでの継続は、佐竹氏によるところ大きい。きっかけは「カントのようでありたい」、つまり哲学者カントの「実用的見地における人間学」に思いを寄せたことだったという。1990年代には人間学研究所と実用的人間学研究会の二つを設け、一方を研究者や学者たちが語り合う場に。一方を税理士、料理人、編集者、建築家などさまざまな(実用的)職業の人達が集う場とした。
出版記念会の最後には良い機会だからと、今後についてそれぞれの意見が交わされた。「そろそろ潮時」のような空気もあったらしいのだが、この場では全員が「せっかくですから続けましょうよ」と頷く。その様子をうかがって私は控えめに思った。ここに1冊の本が生まれ、仲間入りを果たしたからかもしれない、と。
会場から外に出ると、ひさびさの雨もすっかりあがって晴れていた。(田辺澄江)