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Chapter1 知のダイナミクス
知の組織的な創造
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06
07
知識創造企業
SECIモデル

ナレッジマネジメント
グループウェア
コミュニティウェア
アウェアネス支援
知の戦略的な活用
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技術経営
企業の技術戦略
知識資産
テクノストック
テクノプロデューサー
情報システム企画
方法論
社会システムとしての知識
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18
101
102
産業競争力
知的財産権
社会資本
知識創造自治体
政策知
人間力革新
新産業創出

Chapter2 知のエレメントChapter3 知のメソドロジーChapter4 知のエンジン
 

知を創生・統合して企画化する技術家とは
亀岡秋男
研究開発プロセス論


テクノプロデューサーとは

技術や市場の変化が激しく複雑な社会経済環境の中で、新しいイノベーション▲を創出していくには、イノベーターとしての創造的リーダーシップ人材が求められる。ここに今後のイノベーションを推進する主役となるべき、新しい人材「テクノプロデューサー」の認知と育成強化を提唱したい。テクノプロデューサーとは、作曲・指揮者のように創造的な新製品コンセプトを戦略目標として設定し新産業を創出する。つまり、新しい戦略コンセプトを創設し、実践戦略を構築して、これを総合指揮(orchestrating)する、いわば新しいタイプの「技術家」である[★12-1]。こうしたプロデューサーを認知し養成すること、さらにその活動の「場」を創設することによって日本の競争力は高められる(*12-1*12-2)。例えば、ソニーのプレイステーションを先導する久多木氏や、トヨタのプリウスを成功させた内山田氏、日本の新しいIT戦略、WIDEプロジェクトを推進している慶応大学の村井純氏などはテクノプロデューサーの代表例と言えよう。
テクノプロデューサーは、図のように、(1)コンセプトクリエーター(目標創設者)として、環境を認識した上で目標を設定できる能力があり、(2)コーディネーター(目標達成者)として、与えられた目標を達成する過程をデザインできる能力があり、(3)プロジェクトリーダー(過程実現者)として、目標と達成過程が与えられた際にそれを実現できる能力が求められる。特にコンセプト創造力は不可欠である(*12-3)。
ここで重要なことは、魅力ある挑戦目標を明確に示すことである。この目標ターゲットを共有し合い、同じ目標に共鳴する自主的参加者を呼び込むことである。テクノプロデューサーには、企業レベルでも国レベルでも、それぞれの立場や価値観の違いを乗り越え、共有目標に向かって先導する人間的な魅力が求められる。右図では、研究所、事業部、経営陣の相互連携も示している。これがうまく機能するには、研究技術人材や技術知識(テクノストック▲)の円滑な交流・流通、つまりテクノフローの活性化がその鍵を握る。
イノベーションで特に大切なのが、将来技術と潜在ニーズを統合する製品コンセプト創生のプロセスである▼1*12-4)。特に重要なことは、最初のアイデアを得る仮説設定(アブダクション▲)のプロセスである。アブダクション(abduction)は、不可解な事象を結論として説明し得るような仮説で、帰納▲(induction)、演繹▲(deduction)とともに論証の三分法のひとつである。ともかく「こうではないか」という仮説をもち込むことが創造の基本である▼2。アブダクションは、知識科学(knowledge science)▲の面からも興味深い。


  対応ARCHIVE
  イノベーション▲
03 / 08 / 15 / 51 / 52
  テクノストック▲
11
  アブダクション▲
41
  帰納▲
40 / 41
  演繹▲
40 / 41
  知識科学▲
07 / 20 / 27 / 29 / 30 /
47 / 64
  ▼1
児玉文雄氏は、イノベーションに成功するには、「潜在ニーズの早期発掘と独創的な新製品コンセプトの概念構築、その鍵となる重要技術の先行開発が成功要因(KFS)である」とし、これを「デマンド・アーティキュレーション(DA:Demand Articulation)」あるいは「需要表現」と称している。
  ▼2
パースは、知識はアブダクションから生まれるという。演繹では知識は増えないが、帰納だと少し増え、仮説形成(アブダクション)では非常に大きく増えるという。吉川弘之は「人間が行う概念操作がイノベーションを生む原動力ではないか」と示唆している。
 
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